報道番組版多元的無知

フジテレビ系列「報道2001(6/25)」で、三井物産戦略研究所所長沈才彬氏が「中国の農業生産性は日本の40分の1」と発言していた。これ、番組の趣旨である食糧不足問題の文脈で解釈すると、そ、そんなに中国の農業って酷いのか、ということになる。
生産性には資本生産性と労働生産性がある。
こちらのPDFを読むと、沈氏は「2001年の農民純収入は5%増加し、2366.4元に達したが、その内、非農業収入は6.2%増加し、1066.4元に達した」と書いている。農業純収入は1300元ということになる。現在の為替レート1元=14.567円で換算すれば18937円ということになる。
つまり「日本の40分の1」というのは労働生産性のことだ。そりゃあ所得水準に開きがあるからこれぐらい当たり前で別に驚くことではない。だけど番組の文脈から見れば、所得格差ではなく食糧不足がテーマなんだからついつい資本生産性、あるいはもっと単純に1ha当たりの農産物の収量がそんなに少ないのかと思ってしまう。
だけど、司会者もゲスト出演者も誰もツッコミを入れない。ただ、何となく煮え切らない表情で、黙って聞いていただけだった。これで思い出したのは去年の「朝まで生テレビ」の「朝生・長野アナの言い間違い??」だ。あの時も、長野智子アナの真逆の言い間違いに気付かず、議論の流れが変な方向に流れてしまった。
なぜそれなりに知識のある人々が周りにいるのに誰も誤ちや文脈外れを指摘しないのかと不思議だったが、Life is beautiful:セカチューブームは「多元的無知」かを読んで、多分これなんだと合点がいった。特に生番組だと不用意にチェック入れられないし、多元的無知の罠に陥り易いのではないだろうか。
ちなみに、さなえさんが書いた「最低の男」も多元的無知に似ていることは似ている。実際、こちらのサイトを読むと、そんな気がしないでもない。だが4人が互いにその認識を共有しながら何もしなかったという点で、多元的無知とは決定的に違うように思う。
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