池田信夫blog自殺論の出鱈目

livedoor ニュース:借り手の死因が自殺だった場合の保険金支払いを禁止 これは池田信夫blogでも議論されていたが、今回の貸金業規制法改正は基本的に妥当だろう。(初出25日)
池田信夫blogでは、
自殺を原因とする受取件数は9.4%。これは死亡原因(20〜69歳)のうち自殺の占める率9.04%とほぼ同じである。つまり、この保険に入ることによって自殺が増えるという因果関係は見られない。
とされる。
これにはコメント欄で異論が唱えられ、死因判明数が5割も満たないことを勘案すればほぼ死因の2割ということになる。これに対し、池田氏は債務者の多数をなす20〜49歳の死因の自殺に占める割合は25%なのでいずれにしても因果関係がないとされている。しかし、この25%にしてもあくまで死因に占める割合であって、若い世代は病死する確率が高齢世代より低いので結果、死因別自殺率が高くなるのは当たり前のことだ。比較すべきは死因に対するよりも、被保険者に対する自殺者の割合だろう。
日本の20〜49歳自殺者数は平成17年で1万3223人で同年齢計5072.3万人(平成16年10月)に対する自殺率は0.026%だ。これに対し、消費者信用団体生命保険加入者の自殺率はこちらの統計によれば、4908(自殺者数)÷1343万6442(延べ被保険者数)=0.0365%
1.4倍だが、被保険者数は延べ人数である上にあくまで判明しただけに限定したものなので実際の自殺率はもっと大きいはずだ。27日の毎日新聞によると、金融庁の調べでは「消費者金融利用者は平均2・5社から借り入れがある」ということなので、単純計算すれば、自殺率は0.09%に跳ね上がる。しかも死因判明は5割に満たないことを考えれば自殺率は7倍と推定できる。 
池田氏はコメント欄で「そもそもサラ金の債務者に自殺が多いという事実も、統計的には証明されていない」と述べているが、全く杜撰な出鱈目であることが分かる。(27日追記)

しかし、これでも確かに団信に入っている借り手は自殺率が高いということだけであって、「保険に入ることによって自殺が増えるという因果関係を示すものではない」というのも事実だ。
データは持ち合わせていないが、常識的に考えて消費者金融に借金する人は、保険に加入してようがしてまいが、借金苦で自殺するケースが高くなるだけではないのか。そう考えることも可能だ。
しかし、そもそも「債務者が知らないうちに被保険者になっている」ケースが多いのだ。自分が被保険者であることを知らない人が保険で返済しようと自殺するわけがない。
よって今回の改正の根幹は、団信を利用して債務者が自殺で返済するというのを食い止めることというよりも、債権者の金融業者が強引に取り立てて債務者を自殺に追い遣るのを阻止するのが目的なのだ。
そりゃあ、色々な推測は可能だ。自殺されて保険金が下りないと、債権者側はあまり強引に取り立てられなくなり、追い込まれて自殺するケースが減る可能性がある。一方、債権者側もリスクを補填するためにより金利を高くし、却って債務者を苦しめる可能性もある。
しかし、以上は全て推測に過ぎない。
分かっていることは、「いざとなれば自殺させればいい」というオプションが業者に付与されていたということだ。このことは住宅ローンの生命保険と根本的に違うのだ。
ただ、金融庁にしても、単純に改正しておしまいにするのでなく、改正による予測不能要素も多いと思われるので、改正後の事後精査をしっかり行うべきだろう。要するに、学者が研究レベルで開陳するゲーム理論など比較にならないほど現実の事象は複雑で、1段階の論理も2段階の論理も所詮お遊戯に過ぎない。
へえぇ〜ならClick⇒人気blogランキングにほんブログ村 経済ブログへ