メークドラマ

「今晩は!」。
最寄の駅で声をかけられて振り向くと程よいメークの、上品そうな美人の微笑があった。瞬間、誰だろう、何かの勧誘じゃ、と心によぎったが、2秒後、顔見知りの人だと悟る。
こちらの、ポカンとした表情を見てか、「今朝お会いしたばかりなのに。犬を連れていないと分からないのかしら」
ありゃりゃ、本当に今朝会っている。早朝の散歩でいつも犬と散歩しているあの人だ。今朝どころか、ほとんど毎朝顔合わせて挨拶している顔馴染みだというのに。
だけど、姿は全然違う。朝はジーンズ、すっぴん、眼鏡かけている。今すっかり暗闇に包まれた目の前にいる人は、スカート姿でシックなコート着ていて、眼鏡なし。多分、コンタクトだろう。顔は美白だ。頭のてっぺんから靴の爪先までバシッと決めたビジネスモードだ。ああ、この方、仕事していたのか。
一度眼鏡なしすっぴんモードを拝見したことあるが、笑顔が素敵に可愛い。その印象が強いので、落差が大き過ぎて2秒かかった。
「今晩は、じゃなくて、おはようございます、と言ってもらえれば、すぐわかったんですけど」と照れ隠しに返す。
「化粧しなくたって充分美しいのに」と口に出すと口説いているようでまずいので言わなかったが、実際、メークは制服のようなもので、ビジネスには必須アイテムだ。そうなってしまった。ひところ、ネクタイは必要経費論争というのがあったように、働く女性の化粧は必要経費にならないのだろうか?
ワンちゃんのことを尋ねると「一人でお留守番」だとか。旦那様も働いているからだという。お子様はいない。
「ワンちゃん寂しいでしょうね」
「ええ、でも仕方ないです」
ある意味典型的なDINKS with Oneだ。
「じゃあ、また明日」
で、今朝も会った。いつものあの人だった。
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