スウェーデンは環境先進国か

マル激トーク・オン・ディマンド 「不都合な真実を不都合でなくするために」にでは、必要以上にスウェーデンが環境と経済成長を両立した国と持ち上げられ、日本は必要以上に貶められているているが、実態はそれほどではない。
ゲスト出演した福山哲郎参院議員スウェーデンを視察した時の報告で紹介されたものだが、何かにつけて「それにつけても日本は」の外国コンプレックスが抜けていない。
スウェーデンバイオマスなど再生可能エネルギーの比率は高いが、ホストの宮台真司氏が自身のブログで「一方、スウェーデンの温暖化対策をみると、現在既に基準年(1990年)比でマイナスに転じているにもかかわらず、1990年以来のGDPは25%以上伸びている。温室効果ガスを8.1%も増やしながら、10%の経済成長しか達成できていない日本と実に好対照だ」と手放しで賞賛されるほどのものでもない。
List of countries by ratio of carbon dioxide emissions to GDP per capitaで見ると、スウェーデンは先進諸国の中ではCO2 emissions per capita/GDP per capita(ややこしいが、1人当たりの、1人当たりGDPに対する二酸化炭素排出量)は、2.1gでスイスに次いで2位(全世界8位)。では日本はといえば、先進国中8位(全世界20位)だ。(※香港はそもそも国とは言えず、生産物を移入もしくは輸入に頼っているので除いた。)しかも、人口5000万人以上の国では世界一だ。人口小国は、製造セクターを外国に頼っている比率が高いケースが多いので「環境と両立」させ易い。特にスウェーデンは人口密度が小さく、森林面積が広いのでバイオマス源に事欠かないし、水資源にも恵まれえて水力発電の立地条件にも恵まれている。さらに電力は輸入にも頼れる。
本来的に見れば、実質的に「環境と両立している」に一番近い産業国家はほかならぬ貶められた日本なのだ。
日本とて褒められたものでないことはもちろんない。製造セクターの多くを1990年以降、東南アジアや中国に移し、二酸化炭素の排出を外国の下請けに出してごまかしていることは以前書いたとおりだ
しかし、実際にはこのような国同士の比較そのものにほとんど意味がない。現状では、「環境先進国」が省エネに励み、再生可能エネルギーの比率を高めたところで、自己満足の域を抜けていない。その分、化石燃料の消費を減らしても、減らした分は別の場所で確実に消費されるからだ。需給の法則で石油価格も石炭価格も下落し、下落した分、「その価格なら買って使おう」という潜在需要者が世界のどこかにおり、スウェーデンが減らした分は、その潜在需要者が代わりに消費する。要するにモグラ叩きだ。
モグラ叩きと言えば、スウェーデンのように潤沢な森林資源に恵まれた国を除けばバイオエタノール燃料もモグラ叩きになる可能性が高い。農産物から作るとなると、食糧と競合し、その結果、森林破壊がますます促進される結果になりかねない。要するにスウェーデン再生可能エネルギー資源に恵まれ過ぎていて、なおかつ人口が少ないだけなのだ。むしろ、こんなに恵まれていてこんな程度なのかという印象すらある。
その意味で、環境政策の二大政策、炭素税、排出権取引などは既にして時代遅れなのが分かる。特に排出権取引などは、むしろ二酸化炭素の排出を促進しかねない「好都合な京都議定書」に支えらている。
そして、Wikipediaのリストにあるようにスウェーデン以上に環境と両立している国は一杯ある。リストに載っていなくても、GDP抜きで1人当たり二酸化炭素排出量がスウェーデンより少ない国など腐るほど世界にはある。だが、これらの国は元々環境に優しい国であるゆえ、そのことに対して何の賞賛も報酬も与えられない。こんな理不尽な「環境対策」の覇権を争って何の意味があるのやら。
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