納豆ダイエットはなぜ祭りになった

納豆騒動も一段落つき、スーパーでは今まで3パックワンセットどころか今まで見たことのない4パックワンセットを見た。しかも値段は100円以下。納豆価格は急騰の後、急落して却って安くなった。
今にして思うと、なぜこんなに騒動が盛り上がったのか、不思議と言えば不思議だ。別に毎日納豆2パック食べたからといって、ただちに健康被害が出るとは思えない。少なくとも毎日、喫煙で1箱空けるとか、酒1瓶空けるとか、コーヒー5杯飲むとか、ラーメン2杯食べるとか、ケーキ3個食べるとか、に比べればはるかに健康的だろう。テレビで教えられなくても2パックぐらい日常的に食べている人ざらにいそうだ。少なくともチーズ毎日100g食べるより納豆2パック(約100g)食べた方がダイエットになりそうだ(笑)。別に嘘だと分かっても、本来なら「なーんだ、テレビはこれだから信用できん」程度ですんだような気がする。
実際、「あるある」を作ったプロダクションにしても、それほど罪の意識があったとは思えない。この手の健康番組は、同番組に限らず、おおむね和食・植物性食品推奨派で、戦後の行き過ぎた肉食・洋食に警鐘を鳴らすという使命感で番組を作っていたのかもしれない。あるいは日本の食糧自給率40%を憂い、(大豆だって輸入がほとんどだが)肉やチーズ食うより納豆食べさせた方がお国のためだ、と考えていたのかもしれない。だから、こんな騒動になって一番びっくりしたのは当の番組スタッフじゃなかろうか。「な、なんで???」。
彼らは「善意の煽り」をしていたのかもしれない。「善意」なら多少脚色してもかまわんだろう。ところが、「善意」は通じず、blogosphereにいたっては、科学者の倫理とか「エセ科学」問題にまで発展してしまった。UFOとか超能力とか占い(池田信夫blog)まで一部で槍玉に挙げられて論じられているのを見て笑ってしもうた。UFOとか超能力とか占いとかはテレビ的にはエンタメだというコンセンサスあるんじゃなかろうか。まあ、こういう例もあって問題を孕むケースもあるかもしれんが。。飛躍の泰斗、弾さんがニュートンのプリンキピアまで出して来るのは、まあ、凄いと言えば凄いがワタシ的には想定の範囲内だが。
「平成の納豆あるある大事件と科学者の責任」(5号館のつぶやき)うーむ、これは「善意の捏造」であっても「科学の捏造」じゃないだろう。よって科学者の責任とは100%関係なさげな気がする。
それに「エセ科学」ですらないだろう。どっちかと言えば「煽りの科学」の問題であって。そのようなパブリックイメージが出来上がってきた原因には、テレビがあるのではないですか」(高木浩光@自宅の日記)と言われても、一般ピープルはめんどいことは、良いのか悪いのかといった二分法的思考、つまり「結局どーなんだよ、はっきりしろや」と言われるもんで。はっきり言うことは決して非科学的でもないし、悪いことじゃない。人は行動を起こすための確信を欲しがっているわけで、結局どっちなのか結論出ませんでしたじゃ、誰が見るか、そんなもん!
ついでに一番噴いたのは、大科学論にまでに発展したこれだ。
「放送された内容には間違いがあった」けれども、だからといってそれは「納豆にダイエット効果がない」ことを証明したわけではない。そういうレトリックの混同(意図的・無意識的のいずれであっても)は、事実から遠ざかることになる。
 ……と書いたら「松永は納豆にダイエット効果があると主張している!」と誤解する人が絶対いるので、念を押しておくが、そんな話は全然していない。(絵文録ことのは)

どう見ても誤解しているのは松永さんだと思うけど。誰か納豆にダイエット効果がないと言っている人いたのだろうか。言っている人もいるかもしれんが、それは「(番組で主張した意味での)ダイエット効果はなかった」と言っているだけで、何も一般的な命題「納豆にダイエット効果はないと証明された」と言っている人は1人もおらんと思うけど。それは「UFOは存在しないと証明された」と言っている人がいないと同じくらいいないと思う。蛇足だが豆乳も、牛乳よりわずかだがカロリーが高い。なのに牛乳ダイエットってあまり聞かない。
だけれども、これだけ盛り上がるのは、やはりネットの普及が根本原因にあるような。単にあの番組が放映されただけなら、たかが納豆2パックで夜も眠れずにはならなかったろう。石油ショック当時のトイレットペーパー騒動とは切実感においてわけが違う。ネットと携帯とダイエットというキーワードでもってあっという間に祭りが起きた。情報爆発力の問題であって、爆発的伝播は、熱のみならず光も発する。
祭りが起きたから納豆が払底し、それをマスコミが取り上げて更に納豆の糸がウェブのように拡大し、直接関係なさげな話にまで発展した。その結果、かなり面白いネタを短期間で味わえることになった。
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