それでも地球は温暖化している

大気中の二酸化炭素濃度の高まりによって、地球温暖化になるというのは、万有引力の法則が普遍的なのと同じ科学的真実なのだが、いまだにこんな基本的なことをかなり知的レベルの高い層までまだ疑っているという状況を見るにつけ、思い込みというのが知的レベルの高低にかかわらずいかに強く人間を縛るものか思い知らされる。
たとえば池田信夫氏などは知的レベルの高さでは最上級にランクされるべき人と思うが、「アル・ゴアにとって不都合な真実」で、ビヨルン・ロンボルグの他愛ない「不都合な真実」の映画評の、
彼は南極の2%が劇的に温暖化している図を持ち出しますが、残りの98%がこの35年間で大幅に寒冷化していることは無視しています。国連気候パネルは、今世紀中に南極の雪の量が実際のところは増大していくだろうと予測しています。そしてゴアは北半球で海氷が減っていることを示しますが、一方で南半球で増えていることには言及しません。
などという件を紹介し、自ら印象操作に加担してしまっているのだから事態は深刻と言わねばならない。
ロンボルグはこちらのサイトを鵜呑みにしている訳だが、それを否定するこちらのサイトについては言及していないのに疑問を持たないのだろうか。
南極大陸というのは地球全体から見れば極めて特殊な大陸で、温暖化の影響が現象として現れにくいことは確かだ。それでもって、温暖化を過小評価するというのは、室内はうだる暑さなのに、冷蔵庫は冷えたままなので暑くないと言い張るのと同じくらい滑稽なことだ。
あるいは、日経平均は上昇している。しかし、出来高がさっぱりない不人気企業の株価は上がっていないから株は活況と言えない、と言い張るのと同じくらいばかげたことだ。
当たり前のことだが、南極大陸地球温暖化の影響を受けている。南極大陸だけ二酸化炭素濃度の増大による温暖化は作用しないというのは有り得ないことだ。それを否定するのは、たとえてみれば、南極の重力は赤道直下より大きい、だから万有引力の法則の普遍性に疑義がある、と主張するのと同じくらいばかげたことだ。つまり、引力と重力(引力と遠心力の合力)の区別すらできず、遠心力が最も働く赤道直下と遠心力が最も働かない南極の違いすら分からないようなおバカがほざいていることを真に受けているのだ。
ロンボルグは地球温暖化自体を認めているというが、本当に理解して認めているとは思えない。単に表面的に現れている気温グラフを見て、一時的な現象だと認識しているのではないか。もし理解しているならonly the first statement is correct.などという暢気なこと言えないだろう。
ましてや、
Gore shows that glaciers have receded for 50 years. But he doesn’t acknowledge they have been shrinking since the Napoleonic wars in the early 1800’s – long before industrial CO2 emissions.
など大丈夫か?と言いたくなる。industrial CO2 emissionsはearly 1700’sから既に始まっている。long before industrial CO2 emissionsというのは完全な誤りだ。
欧米全体で本格化するのは19世紀だが、そもそも氷河の後退が19世紀初頭に始まったこと自体、大して意味がない。問題は始まった時期ではなく始まってからずっと続いていることだ。
ましてや、ロンボルグの毎度おなじみの「本当に問題とすべきなのはお金を賢く使うことなのです」という、温暖化と、エイズマラリアなど全く次元の違う問題を同じ皿に盛り合わせるという世界最狂のおバカコンセンサスばかりがもてはやされるというのはどういう訳なのだろうか。地球の歴史を調べれば、大量絶滅が起きているのが分かる。それぐらいのスケールの話なのに、この暢気さなのだからアル・ゴアが「こんなに分かりやすく説明しているのに分かってくれない」と嘆くのもむべなるかなだ。ガリレオ・ガリレイではないが、「それでも地球は温暖化している」のだ。もっとも、ガリレイがそう言っても、「それでも地球は回っていない」と言い張る人は今でさえ必ずいるものだが。
[追記]:このエントリーを池田信夫blogにTB送ったら、池田さんが以下のようなコメントを書かれている。
>これもよくある論法で、「感染症対策も温暖化対策も必要だ」というわけです。残念ながら政策資源は有限なんだから、優先順位をつけないでばらまくわけには行かないんですよ。

と、100%完璧トンチンカンなことを言っておられる。もちろん、私が、「感染症対策も温暖化対策も必要だ」などと主張していないことは賢明な読者なら理解されているだろうが、誤解を招かないためにちょっと付け加えておく。世界の全GDPは大体44兆米ドルだ。地球温暖化はまさにこの膨大なマネーとほぼ相関した現象なのだから、ゲイツ財団が仮にすべてを地球温暖化対策に振り向けてもどうにもならないのだ。むしろ、そんなことされれば有難迷惑な話で何の役にも立たないどころかむしろ害になる。問題はこの世界の膨大なマネーの流れ方をどう変えるかであって、ゲイツ財団ごときのはした金をどう使うかのような矮小な問題ではない。
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