映画「ダーウィンの悪夢」

il76 in darwin's nightmare蒸し暑い気だるさが瀰漫したような画像が延々と続く中で、航空機が離着陸し、大魚が捕られ、人々が呟くように語り、人々が死に、そして終わる。「ダーウィンの悪夢」は、公式HPのような「一匹の魚から始まる悪夢のグローバリゼーション」というような声高な告発調の映画ではない。むしろ映像詩のような趣がある。
nileperch55トンのナイルパーチを呑み込むイリューシン76の独特の機体は、そのまま大きな口で小魚を呑み込むナイルパーチの奇態な姿と重なる。
機材の運用の経済性からアフリカの紛争地に弾薬を運んでからビクトリア湖に寄る航空機。あまりにお腹一杯に積んでいるために滑走路目一杯を使い離陸する。離陸してすぐに湖面なのでしばらく湖面すれすれに飛ぶ。失敗して実際に湖面に突っ込んだ機体もある。
「いい給料もらえるから戦争を望んでいる」というガードマン。
「みんなナイルパーチのおかげで潤っている」という魚加工会社経営者。読む新聞には「飢餓」の見出し。そこに立ち寄る肥えた黒い肌のビジネスマンはインド系だ。インド商人は昔から東アフリカに根を下ろしている。真性アフリカ人はスマートというか、痩せている人が多い。
アジの開きの干し場と見まがうようなナイルパーチの残り物が干されている。イモムシや鳥がそれを狙って集まる。子供たちも集まる。片脚の少年がいろいろなところに現れる。
350人くらいの小さな村で毎月10人くらいエイズで死んでいるという黒人牧師が「エイズ予防のためにコンドームを使えとは言えない。キリスト教は婚外交渉を禁じているから」と言う。
Jesusという名の付いた舟が登場し、しばらくすると、キリスト教育ビデオみたいなものが上映され、その中でキリストに扮した役者が舟で漁をしている。舟一杯に魚を積んで。
今にも稲光が落ちて来そうな空の下で熱弁するアフリカ人ジャーナリスト。遠くから雷鳴と、イスラムアザーンが聞こえる。
何もかもさりげなく映され、そのまま一つの物語になってしまっている。
離陸する航空機を無力に、無言で見つめる若い黒人女性の横顔で終わる。
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