Russian Loophole in Kyoto Protocol

以前、「そもそも京都議定書自体が巨大な抜け穴と言うも愚かな巨大な抜け穴を前提にしている目くらましである」と書いたが、その続編。目くらましは、京都議定書版Tax Havenだけではないのだ。実は京都議定書自体がグローバルな自由貿易の促進のために巧妙に仕組まれている。[初出2005年9月]
CO2の削減目標は1990年を基準年として2008-20012年までにEUはマイナス8%、アメリカ(批准せず)はマイナス7%、日本マイナス6%、ところがロシアだけが0%なのだ。(中国は対象外)
さらに1990年から99年の排出量の推移(%)を見ると、
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旧ソ連-34.2
ロシア-27.8*
中国 +29.8
EU -1.0
米国 +14.4
日本 +10.7
全世界+10.2
(注)IEA STATISTICS CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION 2001 EDITION、*ロシアの比率は旧ソ連の数値からの推定。
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となっている。
なぜロシアだけが1990年レベルから暴落したかというと、91年のソ連崩壊後、経済が破綻し、産業が麻痺してしまったからだ。加えて統計もいい加減になったと推測される。
しかも、ロシアの削減目標は1990年レベルから0%。言い換えれば、今から約30%増やしてもかまいませんよ、という増加目標なのだ。
京都議定書の削減目標の基準年が1990年に設定されたのは、このためだ。
これは、ロシアだけだなく、経済的結びつきを強めるEUにとっても、大変好都合だ。京都メカニズム、取り分けクリーン開発メカニズム(CDM)を利用してビジネスチャンスを広げられる。30%分の増加枠をロシアとシェアできるのだから。
先進国は、自国生産から途上国での生産へシフトするポスト工業社会に移行しつつある。言い換えれば、もうそれほど二酸化炭素を増やす必要はないのだ。ロシアのみならず、ロシアと同じような状況の東欧にはEUの企業が京都議定書利権 を求めて殺到している。まだ耐用年数がある事業施設もエネルギー消費が非効率という理由でさっさとEUの最新プラントに変えようとしている。
一見、環境に優しい事業にも見えるかもしれないが、ロシアとのビジネスで排出権を譲ってもらえるし、自国の製品は売れるし、シェアは拡大できるし、願ったり叶ったりだ。
こんなグローバルな詐欺商法あっていいのかね。
[2007/2/12追記]池田信夫 blog:「京都議定書よりも賢明な政策」のコメント欄読んだら
あの寒くて貧乏なロシアが対象国で、中国が「途上国」扱いというのはおかしいですね
なんて書かれている。なんか、こういうコメント読むと、今だ京都議定書の本質が浸透していないのだなあ、と実感される。タイトルだって本来は「京都議定書よりも賢明な政策」でなく「食わせ物の京都議定書なんか・・・」であるべきなのだが。京都議定書批判派でさえこうなのだから、みんなだまされているのかもしれない。為政者が本気で取り組んでいないのは、当然と言えば当然なのだが。
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