「平均生産性」上昇でも賃金上がらない現実

山形浩生 の「経済のトリセツ」:それでも賃金水準は平均的な生産性で決まるんだよ。と言われても、現実はなんでそうじゃないんだろう?
大体、生産性(Productivity)と言っても、色々ある。生産性総合研究センターのサイトを見ると、労働生産性で限れば、
①物的労働生産性=生産量÷従業者数
②価値労働生産性=生産量×製品価格÷従業者数
③付加価値労働生産性=付加価値額÷従業者数
①では「平均生産性」を算出するのは不可能だが、②③だと金額共通尺度になる。「生産性が高い職種」とか言う場合のは②③だろう。
ところで、二輪車の生産量×製品価格である売上額だけど、売れたかどうかってどうやって分かるんだろう? 1台も売れずにパーになってしまうこともあるだろう。 仮に完売したとしても、物的生産性が上がれば、それに正比例して売上額も上がるわけじゃない。大量生産すれば値崩れしてしまう。これはキャベツだって同じで、最近ニュースで聞くように豊作過ぎて廃棄処分になれば身も蓋もない。価格も下がるので却って損益は赤字かもしれない。
まして工場労働者の賃金水準、農家収入と、生産性とどう関係するんだろう? ①は論外だけれど、②③でも、よく見ると、計算式に賃金は入っていないので、賃金と関係なさげだ。
まだほかにも、さらにその下に書かれている
④国民経済生産性=国民総生産(GDP=付加価値)÷就業者総数
これも労働生産性の一つで、付加価値労働生産性を国家レベルで示した指標だ。
労働生産性の国際比較』は、購買力平価でドル換算した各国GDPを就業者総数で割って国民経済生産性を測定し、国際比較したものだ。
結局、山形さんの言う「平均的な生産性」って国民経済生産性のことなのか?総生産を労働者の数で割ったら、日本社会全体でならした平均生産性は計算できるじゃありませんか。一人頭の GDP ってやつですわな」と書かれているから、多分それに近いことにしよう。
だけど、ここまで来ても、なぜ国民経済生産性が賃金を決めるのか、という謎が残る。
このサイトのPDFファイル見ると、日本の2000年以降(2000〜2004年)の実質労働生産性上昇率は年平均1.65%という。時期は一致しないけれど、売り手市場になったはずの昨年の大卒の初任給は前年比0.36%しか伸びていない。それ以前はもっと低かった。だから同時期はほとんど賃金水準は伸びていないはずだ。
ェェエ(´Д`)エェェ ちっとも決めてないよう。
なんでだろう? とじっくり↑の等式群を眺めたら、「平均生産性」(この際、用語はどうだっていいや)は割る数字、つまり就業者数が減っても、高くなるんですな。例えば、時給800円のウェイトレス10人雇っていた1営業時間あたりの売上高1万円の喫茶店が9人に減らして売上が1時間当たり400円減って9600円になっても、ウェイトレス1人当たりの生産性は6.7%上昇する。
生産性は人減らしでも上昇するんだよ
で、後は面倒なのであてずっぽうだが、生産性の高い製造業などの企業は、企業内の生産性の低い仕事を割安で引き受けてくれる派遣社員や外国に発注して、その分の正社員数を減らして更に生産性を高めた。あぶれた従業員は仕方なく生産性の低い清掃業のような企業に殺到し、生産性の低い企業は買い手市場で賃金を抑えられる。結果、「平均生産性」と賃金水準は関係ないという実感に基づいた結論になってしまう。
だから、
「日本の製造業の生産性が上がれば、日本の他の職業の賃金が上昇する」という、より一般的なメカニズムであることが分かります。(分裂勘違い君)
は、やっぱり勘違いなんだろな。大体、勘違い君の説明おかしい。生産性の高い製造業が儲かって就労者数を増やし、賃上げもしたということを無根拠に決め付けている。なら、現実に製造業の賃金がなぜ低いのか説明つかない。だから清掃業は人手不足になり、結果、清掃業の賃金も上がるなんてことない。
現実は逆なこと毎日、新聞かテレビ見ているだけで分かりそうなものなのに。最近、企業が採用数増やしているのは、景気回復もあるけれど、団塊世代の大量退職対策の面の方が大きそうだ。いずれにしても「平均生産性」とは関係なさそうだ。勘違い君が勘違いしていないなら、いざなぎ景気超えた状況の中でワーキングプアが社会問題になるはずもない。
賃金は「需要と供給で決まる」「工場労働者の生産性が上がっても、他の職業、たとえば、掃除人やウェイトレスの賃金が増えたりはしない」(池田信夫blog)がやはりシンプルに正しいという厳しすぎる現実があった。
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