南極圏の海氷増加は温暖化のため

antarctica sea ice田中宇の国際ニュース解説:地球温暖化のエセ科学  南極圏南氷洋)の氷は1978年から現在までの間に8%増えている。 実は増えている理由は地球温暖化のためなのだ。
田中宇さんのソースはこれで、原文は
While sea-ice has diminished in the Arctic since 1978, it has grown by 8% in the Southern Ocean.
なのだが、誤解が生じないよう正確に訳せば「南氷洋の海氷は1978年以来8%増えている」だ。
南極の氷床を含めた南極圏の氷の体積が8%増えたのではもちろんない。
もし、そんなことになっていれば大変な地球大変動だ。海面上昇どころか海面低下を引き起こしているはずだ。当然そうでないから、海面は低下しない。
ではなぜ南氷洋で海氷が増えたのかと言えば、ほかならぬ地球温暖化なのだ。
Sea Ice May Be on Increase in the Antarctic: A Phenomenon Due to a Lot of 'Hot Air'?によると、
However, in the Southern Ocean, with increased precipitation rates and deeper snow, the additional load of snow becomes so heavy that it pushes the Antarctic sea ice below sea level. This results in even more and even thicker sea ice when the snow refreezes as more ice. Therefore, the paper indicates that some climate processes, like warmer air temperatures increasing the amount of sea ice, may go against what we would normally believe would occur.
つまり、温暖化のために、湿気が増え、降雪量が増すが、南極圏は氷点下の世界なので、溶けない。溶けるのは海氷となって海を彷徨い始めてからなので、降雪(結氷)量−融雪(融氷)量がプラスになっているだけの話で、南極ももちろん温暖化の影響を受けている何よりの証左だ。そして、こんなことは昔から言われていたことで珍しくもなんともないのだ。言わば豪雪地帯の高緯度への移動が南極にも及ぼしているだけだ。
池田信夫blog「環境省にとって不都合な真実」でも、武田邦彦環境問題はなぜウソがまかり通るのか』を引用し、
地球温暖化で北極と南極の氷が溶け、海面が上昇するというのは誤りである。北極の氷は海面に浮いているので、溶けても海面は上昇しない。南極は-50℃で「過冷却」になっているので、気温が上昇すると水蒸気が凍結し、海面は低下する。
と紹介されているが、つまり暖かく湿気の多い空気が南極に流入すると、降雪量が多くなるだけだ。(ちなみに武田氏の本はかなりいい加減で、ペットボトルや再生紙などのリサイクルに関する考察は、原料輸送など無視したトンデモと言っていいが、割愛する)
また南氷洋の氷山は、北極海に比べて垂直平面比が小さい(平べったいものが多い)ために余計に積雪量が増えているらしい。(参考)a heavy snow load on the relatively thin Southern Ocean sea ice cover frequently submerges the ice floes below sea level, causing snow-to-ice conversion and thus an increase of sea ice thickness.
じゃあ、なぜ北極圏の海氷が減っているのかと言えば、北極海は大陸ではなく海のため、直に温暖化の影響が受け易く、降雪(結氷)量−融雪(融氷)量がマイナスになっているからだ。
[2/25追記]もっと温暖化の影響を直に受けているのは山の氷河だ。こちらは高緯度で低地でも低温な南極大陸と異なり、低高度から確実に融けていくために正直に文字通り直に温暖化の影響が出やすい。
だから、「水源がまず枯渇--地球温暖化で専門家が警告」(Water could be the first casualty of global warming)
と相成る。
では、南極圏の海氷が今後も増え続けるのかといえば、そうである訳ない。降雪(結氷)量−融雪(融氷)量がプラスなのは一時的なもので、やがて均衡するのは目に見えている。要するに経済学的に言えば、温暖化の遅効性指標なのだ。
田中さんには国際外交に専念してもらった方が良い。
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