ラストキング・オブ・スコットランド
ラストキング・オブ・スコットランドを見る。アカデミー主演男優賞を獲得したフォレスト・ウィテカー演ずるイディ・アミンのあのひんがら目が象徴する隠された狂気は描かれているが、どう狂気になったのかいまいち伝わってこない。
裏切り者に対する恐怖心が高じての狂気か、狂気が異常な恐怖心を呼び起こすのか。現実のアミンは対外的にはニクソン米大統領に黒人の副大統領をおくべきと訴えるとか、先進的な考えを見せていて、「平気でうそをつく人たち」的な魅力を持ったサイコパスのようで、last kingならぬlust kingだったようだ。
側近になったニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)も狂気に気付かない。ニコラスのモデルBob Astlesとはかなり違うが、狂気が露わになっても、アミンの権勢は微動だにしない。
どうも恐怖による独裁支配というのは意外に内部崩壊しにくいようだ。
アミンが追い落とされるのは実際には映画でもちらりと出て来るエンテベ空港ハイジャック事件から3年後のタンザニアとの戦争という外圧だった。
独裁体制というのは自分がその内部にいて危害が及ばない立場にいる限り心地よいようだ。気がついた時は遅いし、手遅れになるリスクに気付きにくいのかもしれない。
そのアミンがつい最近の2003年までサウジアラビアで亡命生活して生存していたことは迂闊にも気付かなかった。エンテベ事件で反イスラエル側に立った功績がそうさせたのかどうか。映画で登場する女性医師のサラ・メリット(ジリアン・アンダーソン)はイスラエルのスパイだ。アメリカの友好国だから手が出せないということもあるんだろう。独裁者は国際的な色々なしがらみを知っている故に色んな面で得をするものだ。サダム・フセインだって亡命勧告に従っていれば今でも生存が保証されていたかもしれない。
日本の近隣にも似たような国が存在し、今にも崩壊すると言われながら意外と内部崩壊しないものだということを思い知らされる今、色んな意味で参考になる。独裁は希望的観測通りには崩壊しないタフな体制であることを肝に銘じるべきだろう。
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