春山の幻想

kaisaku丹沢の尾根から下山中、不思議な感覚に襲われた。まるで雪山で襲われるホワイトアウトに似た感覚で、周囲全体が花霞か春霞に覆われて、淡いピンクホワイトに包まれてしまいそうな感覚。一瞬、山火事で知らぬ間に煙が覆い始めたのではないかという恐怖すら感じた。
確かにヤマザクラなどが咲き、若葉が小さく萌え出でているが、現実には落葉樹林帯のほとんどはまだ裸のままでむしろ枯れ木も山の賑わい風だ。しかし、春の強い日差しを受けると、それらがまるで花霞のように見える。特にスギ林の暗い山道を歩いていると林の外の光が際立ち裸木も輝かしく映える。
pinkoutその下山道は書策新道なのだが、想定外の難所がいっぱいあり、林道に出て御茶屋で一服して店の人と話したら「あ、あのビミョーな道下って来られたんですか」なんて言われる。
へ?と持って来た地図を見ると、実線ではなく点線で表示され、「危険」マークがしっかり付けられている。晴れていたから良かったものの、幅30センチくらいの道幅で踏み外せばがら場にズルリ、転落の危険十分あったし、沢に下りると、よほど目をキョロキョロして確認しないと道を迷うような箇所がいくつかあった。雨の日ならかなり大変だ。
しかし、下山中、なんか恐ろしく能天気な気分だった。下から登って来る人も結構いたし、ほとんど道がどんな状態なんてことに無頓着だった。
ただ、登って来る人に教えてもらったが、シカの死体を見て、「どーせ俺もいずれこうなるさ」と不思議に投げ遣りな気分で下山していたことは確かだ。
しかも、結構トリッキーな道にもかかわらず、迷うこともなく無事下山。
その後だけに店の人の「ビミョー」が妙にこたえた。別のルートから下山し、林道で一緒になった人と話していると、「あの道は絶対降りちゃいかん。特に一人では、と上の山小屋の人に言われたですよ」だって。
春山の幻想に捉えられ、なーんにも考えず、あのピンクアウトの輝きは実は死の匂いの化身で、死とニアミスしていたのかも。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングブログランキング・にほんブログ村へ