平和憲法=終身雇用=リカちゃん

3日の憲法記念日に書かれたブログをざっと閲覧して思うのは、憲法改正論に先んじて始まった終身雇用制崩壊(あるいは終身雇用幻想崩壊)のことだ。両者はそれらを基底で支えるメンタリティにおいて共通の根を持っていた。方や「永久平和幻想」、方や「自分の人生一生安泰幻想」だ。そして両者ともエリート幻想に基づいていたことも。
終身雇用と世界の国々でも見られる長期雇用慣行とはビミョーに違うように、「平和国家ニッポン」と世界の国々の「平和への希求」とはビミョーに違う。
「平和国家ニッポン」は「平和憲法」を守っていれば平和でいられると無根拠に信じることだ。ちょうど犯罪とか破廉恥事件を犯さなければ解雇されるはずがないと多くの人が無根拠に思っていたように。
この二つは車の両輪のようなもので、軍事はアメリカに肩代わりしてもらって経済に専念すればいいものだから実に猛烈に働いてあっと言う間に経済大国にのし上がった。終身雇用制も、身分を保証されたから会社のために猛烈に働くことが空気のように当たり前になり、やはり経済発展に貢献した。
実は日本にはつい半世紀前まで「平和国家」は日本だけじゃない、ソ連(現ロシア)も中国も「平和国家」だと思い込んでいた人が大勢いた。故に憲法を守ることはこれらの「平和国家勢力」と連帯することだった。そして、これらの国々も「失業」のない「終身雇用国家」だったのだ。
ところが、そんなことはない、ふと気付いたら「平和国家」は日本だけだと悟って愕然としているのだ。ソ連プラハに侵攻し、アフガンに侵攻し、中国も核を開発し、ベトナム戦争後にベトナムと戦争し、年を経るにつれて幻想はどんどん崩れていった。ちなみに中ソの核は当時、米帝の汚い核を防止する「綺麗な核」と評する人がいた。終身雇用が実は大企業限定であったようにこの「平和国家」論も多分に選民意識のなせる業だったこともよく似ている。
そのことは内田樹の研究室「憲法の話」でも正直に語られている。
私たちの国の正規軍兵士は他国の領土で人を殺していない。これは先進国の中できわめて例外的なことである。米、英、露、仏、中、どの国もこの「偉業」において日本に遠く及ばない。
もし40年前に内田先生が同じ趣旨で書ける立場だったら、こんな傲岸不遜なこと間違っても書けなかったろう。露(ソ連)と中国をアメリカなどと同列に並べて論じるとは!!!! 書いたらその時点で非難ごうごうで、原稿依頼も来なくなってたであろう。それこそ当時なら狂気の沙汰なのだ。
裏返せば、もはや拠り所は「平和憲法」しか残っていないのだ。
それは壊滅的な敗北の後の内田先生にとってさえ心理的に受け容れがたい「現実」であった。
それゆえ、内田先生は「狂う」ことを選んだ。
この文章は狂わなければ書けるもんじゃない――ということは「生活者の常識」を持っている人ならたちどころに了解可能なのだ。
逃げていそうな人はもう一人いた。山口さんちの浩君はなんと幼児退行に逃げている。山口さんの鋭さには正直、敬服する。
かくも現実はキビシイのだ。激烈な国際競争が「終身雇用」の安穏を突き崩したように、やはり激烈な国際政治のリアリズムが最後の砦「一国平和の安穏」を突き崩そうとしている。
結局、「平和憲法」も「終身雇用」も「リカちゃん」も日本人にとって同じこと、「いつまでも子供のように無責任で安穏でいたい」だったんだと妙に感心させられた次第だ。マッカーサーの伝説的発言「日本人の精神年齢が12歳程度」とリカちゃんの年齢がビミョーに似ているのもコワい。
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