環境問題はなぜウソがまかり通るのか2

kankyouso以前書いたエントリー環境問題はなぜウソがまかり通るのか(武田邦彦著)のペットボトル・リサイクル編。「第1章 資源7倍、ゴミ7倍になるリサイクル」について。
「資源7倍、ゴミ7倍」って何のことかと思ったら、まだリサイクルが始まっていない平成5年、ペットボトル(PET)を生産するために使った資源(石油)は26万トン、リサイクルするようになって平成16年には約200万トンになった、しかし実際にリサイクルされてPETに再生されたのはわずか3万トンということらしい。(23ページ)
当たり前のことだが、論理が真逆になっている。リサイクル始めたからゴミが増えたのではなく、PETの生産が増えてごみが増えたからリサイクルが始まったのだ。分別回収、リサイクルしているから消費者が安心してPET飲料買っているなんて著者の妄想だろう。
本書では、環境団体が大量投棄に拍車をかけ、回収が始まると自治体の負担が563億円になるからPET使用に反対していたことを取り上げ、リサイクルに当初から反対していたかの如く紹介しているが、これも本末転倒だ。(15ページ)
環境団体は大量使用されてしまったPET回収に反対したのではない。最初からPETは作るな、使用するなと言っていたのだ。
ひでえ話だ。
で、本書によると、
1.PET作るのにその倍の量の石油が必要。
2.PETをリサイクルするにはその3.5倍の石油が必要。
3.PET12万トンを廃棄するのにも2万トンの石油が必要。
としている。それを基に計算すると、
・平成5年のPETの生産は12万トン⇒石油消費24万トン+2万トン=26万トン
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・平成16年のPETの生産51万トン⇒石油消費102万トン
・平成16年の回収してリサイクルしようとしたPETは24万トン⇒石油消費84万トン
・平成16年のPETリサイクル量は3万トン⇒(ウン?)

・残り27万トンの廃棄のための石油消費2万トン(ウン?)
・平成16年計188万トン
という。
まずおかしなのはリサイクルするために石油消費は3.5倍と言っておきながら、なぜか回収量全てを3.5倍している。なぜか廃棄に要する石油が、27万トンであろうが、12万トンであろうが一律2万トンに計算されている???
普通に計算すれば、102万トン+(21万トン+27万トン)÷12万トン×2万トン+3万トン×3.5=120.5万トンになるはずだ。
とすると平成5年の26万トンとの比は4.6倍だ。「資源7倍!」は間違っている。
次に「ごみ7倍!」これもおかしい。普通に考えれば、「ごみ」とは回収されないPETのことだ。平成5年は12万トン、平成16年は21万トン+27万トン=48万トンで4倍のはずだ。しかも、回収PETのうち、平成16年には20万トンぐらいが主に中国に輸出されている。中国では縫いぐるみの詰め物などに使われているという(参照)。とすると、回収されたPETのほとんどは二次利用されており、純粋にごみとして廃棄されているのは28万トンのはずだ。つまり、28万トン÷12万トン=2.3倍なのだ。
もし、回収すらしていなかった場合、どうなっていたか、著者は対照比較すべきだったろう。
ところが、本書では、なんとリサイクルに要した石油もごみ扱いされ、200万トン÷26万トン≒7倍ということらしい。つまり、「資源」も「ごみ」も要した石油消費量のことで同じことであるばかりか、しかも両方とも間違っているのだ。まあ、某CMじゃないが、「7倍、7倍!!」と言った方がインパクトは出るんだろう。
故に、
環境問題は人をだましやすい!
という本書裏のキャッチコピーには同意せざるを得ない。
なぜ著者は「ペットボトルを使用するな」と直に訴えないのだろう。摩訶不思議だ。
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