お菓子のかけらと投石の落差

安倍首相:遊説中の菓子は「子どものカステラ飛んだだけ」(毎日) 塩崎恭久官房長官は23日の記者会見で、安倍晋三首相が22日に東京・銀座で参院選演説会場に歩いて向かう途中に近くをお菓子のかけらのような物が飛んだことについて「事件性は全くなく、子どもさんのカステラが飛び散ったというような話らしい」と説明した。
ついさっきまで「戸井十月インタビュードキュメント 全共闘それぞれの“決着”」を見ていた身にはその落差に少々愕然とする。
番組で紹介されていた日大全共闘は20億円にのぼる授業料使途不明金をめぐる糾弾闘争で、理事総退陣に追い込んだ。ところが佐藤栄作首相は「人民裁判」は無効として介入、退陣を撤回させて火に油を注ぐ結果になった。機動隊が投入された当初、大学側に協力して砲丸や椅子を投げ付ける体育会系学生を検挙しにきたとばかり思い込んだ学生たちは拍手で出迎えたが、捕まったのは学生側というある意味漫画的な展開。キレた学生が投石、角材で応酬し、一気に学生闘争に火がついたというお話。
あの三島由紀夫全共闘との対論に臨んだが、学生側は、「本で読んだ知識をひけらかすだけの教授ではなく、全人格をかけて敵陣に乗り込み、対等にしゃべってくれた三島に敬意を持った」というエピソードもあった。三島を招聘した学生は当時、極右の象徴だった詰襟学生服姿で三島を迎え、一般学生からはヤジられたり、「あてつけか」などとからかわれたそうな。本人はそんな反応になるとは露知らず、ただ敬意を表すために思いついた最善の服装と他意がなかったという。三島の方は後日、お礼の電話した時に「君の学生服姿は格好よかったから楯の会に入れよ」と勧誘した(恐らく冗談)とか。結局入らなかったわけだが、番組でたびたび使われた「濃密な時間」通りの時間が流れていたのだろう。
あれから40年。まるでタイムマシンのように移動して、「お菓子のかけら」が安倍晋三首相を襲った。無事で何より(笑)。
けれど、このニュースの顛末よく分からない。そもそも軽いカステラのようなものが飛び散ったからといって、投げ付けられたように見えるのだろうか。どこでどう飛び散ったら、投げ付けられたように見えるようになるのか想像できない。もっとも、カステラのくずって投げても飛ばないか。まことにシュールな事件だ。なんかの拍子で昔の記憶と目の前の現実をオーバーラップさせた人がいて、その幻が一人歩きしてしまったのだろうか。
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