村上ファンドは天下り官製ファンド

前に「アクティビスト活動と村上判決は無関係」を書いたら、磯崎哲也氏から反論でもなくなんと言ったらいいかよく分からんTB「村上判決は日本のアクティビズムの死か?」が来た。読んでみると、どうも磯崎氏は村上ファンドを純粋な「独立系アクティビストファンド」と認識しているようだが、実態的に見て「独立系」などと見るのはちゃんちゃらおかしい。
独立系でなくてもアクティビスト・ファンドは行えるか?の項の、

こういったアクティビストは上場企業からは嫌われる可能性の高い事業ですので、そういった業務を、大手証券会社系や銀行系のPEファンドなどが行えるか?というと、他の取引関係に大きく差し障るので、なかなか難しいのではないかと思います。

とか、コメント欄での、

日本のVCファンドも、シリコンバレーみたいに、イケてる個人の人が設立した独立系がドンドン出てくるかと数年前までは思っていたんですが、現実を見ると、大手証券、銀行系のVCがシェア上位に軒並み並んじゃってます。
これは、いろいろ要因が考えられると思いますが、一つには、日本で独立系の人が高い信用を得て、いきなり100億円単位のお金を集めるというのは難しいということがあるかと思います。
などを読むと、そう思わざるを得ない。

しかし、村上ファンドって創業者の村上世彰氏自身が通産省のエリート官僚であり、その配下には野村證券幹部、警察庁官僚も従えた実質多国籍天下り官僚別働隊であったことは明らかだろう。
設立されたのは1999年だが、当時はちょうどライブドアが上場した東証マザーズがオープンした年でもある。つまり、「失われた10年」の打開策として官主導でベンチャー企業育成、株式市場の規制緩和が始まった記念すべき年だ。翌年には森喜朗首相のイット革命が華々しくぶちあげられた。
日本では外国の例を手本にする場合、必ずと言っていいほど「日本版ナントカカントカ」も官主導で造られるのが通例だ。村上ファンドとは言わば、こうした伝統的官主導の「日本版アクティビスト・ファンド」というわけだ。村上氏が創業したというよりも、子供の頃から株やっていた村上氏に白羽の矢が立ったというのが実態だろう。もちろん、表向きは村上氏が通産官僚の地位を投げ打って自ら立ち上げたというストーリーを演出して。つまり、官主導のヤラセ独立系ファンドなのだ。
そうでなければ、2006年3月末で4444億円など集められるわけがない。福井俊彦日銀総裁が応援してカネを預けるはずもない。
こういう事実があるのにもかかわらず本気でか意図的に振りをしてか「独立系ファンド」なんて平気で言うところが痛い。
言わば、村上ファンドとは、むしろ農水省で言えば官製談合の緑資源機構の親戚みたいなものなのだ。
それを寄ってたかって、「モノ言う株主」とか「お上に逆らう風雲児」と喝采する人たちもいるのだから、噴飯という言葉はこういうことのためにあるんだろう。官の支配を裏で支えているのは、実はどーしよーもない民のお人好しぶりと言うしかない。
村上氏と絡んでからライブドアがおかしくなったというのも頷ける。2005年の選挙の時、堀江貴文氏が武部勤自民党幹事長や竹中平蔵内閣府特命担当大臣の応援を受けたのも、元はと言えば官僚天下りファンド率いる村上氏のおかげといえば納得もできる。全て官を中心にできた自作自演の輪だ。逆に村上氏にも心の中では「親方日の丸」意識があり、「オレが捕まるわけねーよ」という、脇の甘さがあったに違いない。
こうしたことからも、これらの事件を国策捜査と批判するのは大いなる勘違いで、その実情はむしろ政官内部の権力闘争の中でのパワーゲームと見るべきだろう。一連の小泉改革路線とそれに抗う勢力との暗闘のエピソードに過ぎないのだ。
結局、何をするにも、何をされるにも官が絡まなければ何もできない、できたと思ったら、官によるやらせでした、事件が起きれば、官は関係ありません、と言えるようなシステムができているというのがこの国のあり方だ。
要するにどうしようもないのだ。
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