シッコ(Sicko)

sickoSickから派生したSickoというスラングって、ちょうど漢字の「病気」と片仮名の「ビョーキ」の関係に近いニュアンスがあるらしい。そして、また日本人的には、オシッコを出す時の精神分析学的爽快さ、カタルシスにも通じるようであって、なかなか微妙なタイトルではある。微妙といえば、この映画自体、ビミョーで、アメリカはビョーキ、マイケル・ムーアもビョーキでションベン垂れ流したような映画を取り捲る――This is America.
保険会社の支払い拒否は近年、日本でも次々と発覚し、手本はやはりアメリカなのかと思い知らされる。
ヒドイ医療制度のアメリカと対比される国は、カナダ、イギリス、フランス、そしてキューバ。残念ながらムーアは日本まで来てくれなかったようだ。ほんの1週間前まで厚生局長を退職した人となぜか金腐るほど持って使い道に困っていそうな社会福祉法人理事長との関係とか、妊婦救急車盥回し事件とか、探せばネタには困らなかったはずなのに、誰もムーアにタレコミした人はいなかったのだろうか。ここらへんに日本人の英語力の壁を感じる。
ツッコミは英語のWikipediaに詳しいが、個人的にも、例えば、イギリスの医師は患者を治せば治すほど報酬も上がるとか、言っていたが、その割に医師不足でやたら中東、インド人医師が多く、最近でもテロに関与した外国人医師が記憶に新しい。映画でも紹介されたNHS制度も「英入国審査、医療関係者も厳格に」(日経)なんて記事もあった。
ちなみに最大のツッコミどころは、WHO(世界保健機関)のranking of the world's health systemsで、アメリカは37位でスロベニアの38位よりはましと紹介しているが、絶賛したキューバはさらにその下の39位
37 United States of America
38 Slovenia
39 Cuba

が完全スルーされている点だろう。カナダだって30位
30 Canada
だから大してアメリカと変わらないじゃないか。

日本の医師も一昔前までは社会的地位、お金持ち度、安定性からお嫁にやりたい職業のナンバー1だったようだけれど、近頃はその地位を追われ、重労働、金があっても使う時間なしの、医者の不養生ならぬ医者の過労死、医療過誤リスク、と真面目にやれば、かなりキツイ職業であることが認識されつつある。日々の勉強だって大変そうだし、包茎専門医となればバカにされそうだし。医者が食品会社なんかと組んで「この成分は○○にいい」とかテレビで出て煽るのも分からなくもない。
「我々にはもっとカネを得る権利がある」意識は日米共通なのだろうし、実際、そうでないと医者も患者もwin-winな関係になれそうにない。医師と金持ちだけがwin-winじゃ救われないし。フランスの例だったか、患者が治療のために有給バカンス取れるのなら、医者も十分にバカンス取ってもらわんと結局、患者にしわ寄せが来る。
ムーアについて言うなら、この人、メタボ体形で、医療問題を語るにはちょっと説得力に問題アリか。本人は絶対健康なんかに気使ってない感じ。付け加えるなら、顔は陽気そうだが、目は笑っていない、て感じの、デブによくありそうなタイプ。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログへ