インベージョン

invasionパーティーで議論好きのロシア人外交官が「新聞から戦争や暴力の記事がなくなったら、もう人間の世界でないのかもしれない」と饒舌をふるう。そして、映画はその通りになるという設定。
なぜロシア人外交官と言えば、元々1950年代のソ連脅威論、赤狩りが最盛期だった1950年代の映画のリメイクと関連しているのだろう。原作は「盗まれた街」。まるで自分の若い頃の経験をアメリカ人に伝えたくて仕方なかったということか。感染すると感情のない無表情になるというのはポルポト時代のカンボジアを彷彿させる。
しかし、人はしたたかで、それでもすぐに知恵をつけて無感情の振りをする。けれど、そんな簡単に状況を把握できるんだろうか。
主演のニコール・キッドマン精神科医であるのも、元々はマスヒステリアが題材で、原作の名残。けれど、実際のところ、この映画は個人的な精神分析的悪夢だったのか最後まで良く分からない。
スペースシャトル「コロンビア」の空中分解事件を借用する必要がよく分からない。普通に着陸しても同じだろう。搭乗員が宇宙で感染したということでも違和感ないはずだが。本当なら謎のUFO墜落という線で行きたかったのかもしれないが、それでは知的ウィルスの侵略としてはおかしいということで、妥協案としてこうなったのだろうか。最近起きたペルー隕石異臭事件がもうちょっと前に起きていたら、この事件を借用されていたんじゃないかと。
もう一つの新趣向は「寝たら負け」で感染(ダウンロード)してインストール(発症)されるのにレム睡眠行動障害が条件になっていること。
症状
寝言
睡眠時の異常行動
[編集] 診断
重要なのは寝言や睡眠時の異常行動が本人の見ていた夢と一致することである。異常行動中に覚醒させることは容易であり、本人に夢の内容を確認しておく。睡眠時の異常行動としてよく知られるものに夢中遊行症(夢遊病)と夜間譫妄があるが、これらは覚醒させることが困難である上に、行動中の記憶はないことがほとんどである。

とのこと。また、6 - 8時間の睡眠のうち、1時間半 - 2時間をレム睡眠が占めるとのことで、ニコールが一時的に眠ってしまうが、必ずしもレム睡眠に入ったかどうかわからない。レムとはREM(rapid eye movement)なのだけれど、お母さんが寝ているのを発見して息子が瞼を開けて眼球が動いているかどうか診断するなんて天才坊やじゃないだろうか。
ところで、米政府高官たちがいち早く感染したのに、なぜノーベル賞級の医学者を召集して対策が講じられたのかもよく分からない。ましてや彼らが米軍に守られているらしいのも解せない。米軍はイラクから撤退したのだから彼らのコントロール下にあるんじゃなかったのか?
侵略者が説く「平和で調和のある世界」はちょっと臭過ぎる。エイズ治療薬無償配布、金正日核放棄(半分当たりだけど)、米軍イラク撤退、テロがなくなるとか、最後のオチはダニエル・クレイグが新聞を読んで、イラクの死者数の記事に嘆くシーン。
確かにクレイグは脚を撃たれただけで死んでいないが、平和になったはずのイラクが知的ウィルス退散の後、なんでテロがぶり返すのか? 結局、個人的な悪夢だったのか? ここら辺、もうちょっと何とかならんかったのか。お陰で、やっぱりアメリカ的自由と民主主義がいいんだよ、というプロパガンダじゃないのかと意地悪く見たくもなるというものだ。
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