魍魎の匣

moryo京極夏彦原作、原田眞人監督。1952年の日本の風景は中国産偽装日本の風景のようで、中国の地方都市近郊特有の紫がかった薄茶色の靄のような雰囲気が立ちこめる。日本にはないレンガの街並み、明らかに日本と異なる民家の屋根瓦、蘇州とおぼしき運河とか、風景自体が魍魎なのもミソ。
同じ50年代の風景でも「三丁目の夕日」とは違う。「夕日」は限られた街の風景なので、VFXの映像技術の処理でいかにも懐古的日本の風景を再現できたけれど、かなり広々とした郊外はそうもいかないのだろうか。普通に見れば、いきなり違和感がある。
これに対し、ラストに出て来る研究施設は逆にモダン過ぎる。合成樹脂の通信線とかがいっぱい張り巡らされて台無しだ。シベリアあたりにありそうな旧ソ連の研究所探せばそれなりにいかにもの感じ出せたとは思うが。ただ、山の上に味も素っ気もなく立つ姿は、そこはかとなく酒鬼薔薇聖斗事件のタンク山を彷彿させなくもない。阿部寛(↑写真)が発見するあの雁首男、思わず戦前のドイツ映画「メトロポリス」を脊髄反射で連想してしまった。
トリビアでは、南武線の駅で轢かれる事故のシーンで、背景に京阪電車の赤とオレンジツートンカラーの旧特急車両がチラリと見えた。確か今、長野電鉄とか富山地方鉄道で使われているはずだが。でも、あれは1950年代の車両じゃないだろう。
ストーリーはかなりややこしいが、大雑把に言えば、「フランケンシュタイン」に、「海と毒薬」(遠藤周作)、「ひかりごけ」(武田泰淳)を加えた感じだろうか。安部公房の「箱男」のイメージも加味されて、コメディタッチで処理しているような。
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