スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

あるいは、
笑わない男vs.顔の固まった少年
sweeney toddイギリスの劇作家ジョージ・D.ピット原作、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演。何度も映画化され、ブロードウェー・ミュージカルにもなっている。手元の英和辞典でもSweeney Toddがヒットするくらい有名な物語だ。
映像は赤と黒が基調。赤は血、黒は陰惨。けれど、これはコメディ・ホラーで結構笑え、最後には泣ける。
じーと、最後までジョニー・デップの表情を見ていたが最後まで笑わなかった。無表情か怒りか、悲哀かいずれか。ミュージカルなので歌も披露している。
ed sandersそのデップを食うぐらいの演技を見せたのは、トビー少年役のエドワード・サンダーズ。秀逸の演技、というか、無表情で顔が固まったまま。虐待に虐待を受けた少年は虐待にすっかり適応してしまい、無表情がそのまま固まってしまったようで、それでいて、固まった顔のままでこの年で人生の酸いも甘いも噛み分けてしまった無惨を表現しているのは驚異的だ。彼の演技は英米でも絶賛されているようだ。
ストーリーは最初に暗示されている。ミンチを捻り出す機械と、売れないミートなしパイを売る店。二階の理髪店。実はこの両店はコラボレーションで究極のリサイクルというか、食肉偽装というか、要するに環境に優しい「共生」をして繁盛する。
ま、精神病院で鬘の材料を仕入れているのだから、こんなのもあっていいだろう、いいわけないか。
ツッコミを入れれば、なぜトッドが娘の姿を自分で確かめに行かないのか、妻の顔を忘れてしまうのか、人間関係がまとまり過ぎているとか、色々ある。他に煙に異臭がするというのはどうか。肉はパイの原料だから、燃やしてない。余った部分を燃やしたとしても、あんなに強火で焼けば異臭はしないと思う。それから毎度毎度、大量の血が飛び散った理髪店の床を拭き取るのは大変だ――けれど、そういうことも忘れてしまうくらいだ。
陰惨さの中で最後に希望をつかむのはドブネズミのようなトビーのようで、これまた泣ける。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログへ