ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

nhcs1なぜか高校青春ラブストーリーにはまりそう。前回が「」なら、こちらは「月」と「雪」。風流2倍、いや実は1.65倍なのだけれど。ちなみにこの写真はキル・ビルとは無関係。滝本竜彦原作、北村拓司監督、市原隼人関めぐみ主演。
奥床しい映画だ。一見、バイオレンスアクション、ファンタジー、ホラー、コメディ、青春ドラマのごった煮のようだが、バイオレンスやファンタジー、ホラー、コメディの部分は照れ隠しのように見える。
絵理(関原めぐみ)の悲しみが大きくなればなるほど強くなるチェーンソー男、これはどっからどう見ても、バイクからのトランスフォーマーで、バイクのような騒音を唸らせ、バイクのチェーンのようなチェーンソーを振り回して絵理と死闘を演じる。
nhcs2つまり、バイク事故で死んだ、退屈な現実に妥協できない根性アリの能登(三浦春馬) の化身であることは見え見えなのだけれど、まるで歌舞伎の黒子のような格好しているので、見て見ない振りをするのが礼儀。
根性ナシの陽介(市原隼人)はそれに気づくかと思いきや、能登は親友で目標だったためか、気づかない。けれど、能登自身が自分を越えることを許さないと命じる。多分、能登は、陽介に「お前はワンパック8400円の高級黒毛和牛霜降り肉がよく似合っている。絵理と一緒に食って生きろ」と言いたかったのだろう。
それにしても、イントロの、満月の江戸タウンの決闘は美しい。真剣ではなくゴルフクラブで殺陣をする絵理なんてオチャラケもいいところのように見えるが、真に痛切な悲哀はこういうおバカなことでしか表現しようがないのだ、ということがひしひしと伝わる。
いきなり映画のセットのような場所で始まること自体、「映画的現実」の更にその中に「映画的現実」がありますよ、と最初にお断りしているようでもあり、「インランド・エンパイア」に通じる手法だろう。世界的な評価を得てもいいとさえ思えるけれど、結局、マイナーな評価で終わるんだろうな。
nhcs3余計なのは、絵理の一家全員が交通事故で死に1人で生きていること。この仕掛けが明らかになった途端、新聞の三面記事風、ワイドショー風のお涙頂戴になって白々とする。
実はこれも照れ隠しなのかもしれない。ホントはそうじゃなくて、愛していた能登との関係を陽介に悟られないための絵理の算段だったのかと。
というわけで最後はお約束のような夕陽と海というハッピーエンドになるのだが、浪花節かよ、というツッコミに対しても、本当に浪花節のメロディで「完」になるから芸が細かい。
なぜこんなに照れ隠しが多いのかと言えば、先生が言っていたように、一昔前の世代と違って、賢くなり、ストレートに反抗しない、反抗しても現実が変わらないことを知っているという、のがヒントだろう。タイトル通り「ネガティブハッピーエンド」でもある。
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