アメリカン・ギャングスター

americangangsterリドリー・スコット監督、ラッセル・クロウデンゼル・ワシントン主演。時代はブラックパワー旋風が吹き荒れていたアメリカ。裏社会でもこのパワーが吹き荒れていたことが分かる。
今も生存するフランク・ルーカスをベースにした実話に基づく映画という触れ込みだが、当の本人は the film is only 20% accurate.(事実は20%しかない)と言っており、あくまで基本エンターテイメントのようだ。
ブラックパワーのシンボル、モハメド・アリもチラリと登場し、1971年3月のジョー・フレイジャーとのFight of the centuryも描かれている。というか、黒人の英雄同士の対決というビッグイベントが、観客席にいたルーカスという謎の存在を浮かび上がらせるきっかけになるのだから、分からないものだ。
アリはあの試合、「Frazier falls 6th round」と書いたプラカード掲げてリングに入場するパフォーマンスをした。しかし、兵役拒否でブランクのあったアリはフレイジャーに一方的に攻め立てられ、ダウンも喫し、完敗だった。アリの復活は3年後の、そのフレイジャーを1RでKOしたジョージ・フォアマンRope-a-dopeで消耗させ、KO勝ちしたキンシャサの奇跡だ。←この試合かなり如何わしいらしい。
一体、なぜこんな映画のトリビアなのかと言えば、この映画のタイトルには、アメリカン・グラフィティをもじったような雰囲気があるからだ。事あるごとにニクソン大統領がテレビに出て来てベトナム戦争の進展と、フランク・ルーカスによる純度100%の麻薬密売ルートとが重なる。
アリはベトナム戦争に反対することで自分の地位を上げたが、ルーカスは教会に通う一方で、ベトナム戦争を超道徳的に、クールに利用した。結局2人は似た者同士だったんだろう。
americangangster+ところで、あの中国人の麻薬の総元締めは、何気にか毛沢東に雰囲気が似ているのはたまたまだろうか。この俳優誰なのか見落としてしまった。なんとなくマッツ・ミケルセンに似ているように思えたけれど・・・。
仲買人を中抜きしてディスカウント店風「いい商品をどんどん安く」「ブランドを大切に」なんて裏ビジネスでのし上がるのも経済的合理性抜きでは語れないことが分かる。実はルーカス、映画の冒頭で恩師のボスが「顔の見えない経済的合理性だけでいいのか」と嘆いていたのを知っていたのだが、ルーカスのやったことは徹底的に顔が見えるファミリーだけを信頼し、ファミリー以外には徹底的に顔が見えなくして独占するという合理化を徹底化することだった。
本当に文字通りの実話かどうかともかく歴史のダイナミズムをうまく利用した面白い作品ではある。
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