世界最安車造ったインドのタタ叩きのアホらしさ

WIRED VISION:28万円自動車『Nano』は「大きな環境的災厄」になるか(英語原文) Nanoが発売となるのはこの秋のことだが、すでに環境保護に熱心な人々は、この車が二酸化炭素の排出を大幅に増やし汚染拡大をもたらすと主張している。
という。
Nanoは1キロメートルあたり30グラムの二酸化炭素を排出すると見積もられており、これは1キロメートルあたり160グラムを排出する平均的な欧州車よりもかなり少ない。
のにだ。
こういう記事を読んで思い出すのは、以前書いた「金持ちほど環境に優しい生活しているという罠」という、GDP比では最も環境に優しい車とは何かという問題。タタ社のナノは1キロメートルあたり30グラムの二酸化炭素を排出するとされるが、160グラムを排出する平均的な欧州車よりも対GDP比での排出量は恐らくどっこいどっこいだろう。ユーロ高の現在、むしろ欧州車の方がGDP比で「環境に優しい」はずだ。金持ち国は、実際には自分達の方がはるかに環境に悪い生活しているのに対GDP比に対する排出量が少ないという罠で錯覚してしまう。
付加価値の高い欧州車は付加価値が付けば付くほど全体のGDPに対する排出量の比は見かけ小さくなる。基本的な価値、「移動する」ことが最も排出量が多いからだ。
しかし、実質的にはもちろん、30:160でナノの方が環境に優しいのは明らかだ。それでもなぜ欧米の学者までが心配するのかと言えば、安すぎて車を乗る人が増えて困るというものだ。
"This car promises to be an environmental disaster of substantial proportions," says Daniel Esty, an environmental expert at Yale.(Newsweek:How Green is a Mini?)
具体的には、
The Nano is likely to replace motor scooters and motorbikes, which get about 54 kilometers to the liter, more than twice what the Nano gets, according to Daniel Sperling, director of the Institute of Transportation Studies at the University of California, Davis, who has studied the situation in Delhi.()
リッターあたり半分で同じ距離を走るスクーターに代わってナノに乗る人が増えると排出量が増えるというわけだ。身勝手な話だが、スクーターから欧州車に乗り換えるよりましだろう。同じ理屈で、インドで作られる安い製品を欧米が買っても同じことが起きるわけだ。欧米で作った製品は高いから売れないので環境にいい影響をもたらすと。しかし、欧米はそうしないだろう。
そこまで心配するなら、インドに投資しなければいいではないか、ということになるが、彼らは決してそんな損なことしない。この困り方は当然、インドでの車のシェアを奪われては困るということと表裏一体だ。
ちなみに、この記事では、
50万台のNanoが路上を駆け巡り、それぞれが1年あたり約8000キロメートルを走った場合、インドの年間CO2排出量の8%弱程度に相当するだろうと、The Economic Timesは報じている。
としているが、実際にはThe Economic Timesは、
Taking the worst case — 5,00,000 on roads and each running 8,000 kilometres annually — the total CO2 equivalent will be less than 8% of India’s total CO2 emission. And if we take a more realistic assumption then it will be less than 1% of India’s total CO2 emission. Environment guys would do well to go after the other 99%.
と、最大に見積もった場合であり、現実的にはインドの年間CO2排出量の1%以下だろうとしている。えらい誇張だ。それはそうだろう。ナノが50万台増えても、インドでは既に
there are more than 5 million cars in India today.
500万台以上の車が走っており、それらの車と比較して40%も排出量が少ないのだから。いっそ、ヨーロッパの環境保護団体は欧州車からナノに乗り換える運動をすればいい。
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