堀紘一氏、日本のIT産業にダメ出し

堀紘一ドリームインキュベータ会長「ITなんかね、日本が伸びるわけないわけ。なんでかと言ったら、こんなの、アメリカの猿真似やっているだけだもの。オリジナルは何もないもの。だから、日本からIT産業ができたって、海外なんかに出て行けるわけないじゃないですか。日本語という言語障壁を使って日本の中だけでチマチマやっている連中なんだから
この発言は久々に録画して後で見た「朝まで生テレビ」(先月末)からの書き写し。
「言語障壁」。これは「言語という非関税障壁」の略だろう。自分でも似たようなこと過去に書いて顰蹙買った覚えがあったので、つい聞き入ってしまった。「チマチマ」なんてアフィリエイトのことかと思えば、IT業界全体がそうらしい。
アメリカの上位100社にはベンチャービジネス系企業半分くらい占めているのに、なぜ日本にグーグルやヤフーやマイクロソフトのような企業が出て来ないのか、に話題が移っての発言。
堀紘一さんのドリームインキュベータってHPに「未来のホンダやソニーを100社創出していきます」と掲げられれている通り、ベンチャーの投資・育成を主にした東証一部上場のコンサルティング会社。ということは、日本のITに「未来」はないと見切りをつけたようだ。まあ、今では常識の部類なんだとは思うけれど。
討論の一応の結論は、「日本では失敗を許さない」ので一度失敗したらカネを貸してくれないからということに落ち着いた。
なるほどな、とは思った。失敗が許されないのなら、猿真似するのが一番確実ということになる。日本のITベンチャーに「オリジナル」がないのではなく、オリジナルなものは出て来れないということだけだろう。「アメリカの猿真似ばかりの連中」がチマチマ国内だけでやっているのは、それが日本での勝ち組の条件なのだということになる。まあ、そう言っている堀氏したって「オリジナル」があるとは思えないのだけれど。
もう一つ「言語障壁」。確かに「言語障壁」によって守られて「チマチマ」してしまうのは仕方ないのかもしれない。
同じことが、新聞業界、テレビ業界にも言えるわけで、新聞が発行する英字新聞は日本国内の英語読み向けだし、テレビ局がCNNやBBCワールドのように世界市場に打って出るという話も聞かないし、また誰も期待していない。
これは、歴史を遡れば、明治維新までたどり着く。日本は黒船以降、必死で立ち直し、欧米列強の植民地化から免れた。アジアで唯一大国ロシアを負かした。もし、イギリスかアメリカの植民地になっていたら、今頃英語は半ば公用語になっていたろうし、今話題の外資規制の問題もおきていなかったろう。
日本の外資規制や海外投資の相対的少なさにはそれなりに理由があって、つまり比較する国がそもそも昔から言語的にボーダレスだったことだろう。ヨーロッパ諸国は元々言語的に親戚関係にあり「言語障壁」は日本のよりはるかに低い。植民地だった、アメリカ、カナダ、さらには中南米、アフリカ、中東、インド、東南アジア、オセアニア、みんな元欧米の植民地だったのだから、「言語障壁」も低い。「言語障壁」が低ければ、「心理障壁」も低くなって当然だ。
つまり、今の日本を評してよく言われる「パラダイス鎖国」「ガラパゴス化」と言った揶揄は、たまたまあまりに日本が見事に植民地化から独立を守った過去の栄光の裏返しで、ゆえに「言語障壁」が高止まりしたままなのだ。「日本人は英語が苦手」なのは神話であって、欧米列強に唯一対抗できたことの裏返しだ。他のとこは植民地化されて否が応でも毛唐の言葉を強制されたのだから。シンガポールも香港もみんなそうだ。
その結果、言語が直接的に関わるような世界的産業が生まれにくいことになる。仮にグーグルと同じことを日本のITベンチャーが先駆けてやったとしても、世界企業にはなれなかったろう。なぜなら日本が「言語障壁」に守られているということは、裏返せば、ヨーロッパ語圏はとんでもなく巨大な市場に守られているので、絶対的に有利だ。他の言語圏からチャレンジを受けても最初からアドバンテージがあるので日本発はつぶされる気がする。
ということで、堀氏の言っていることは半分当たっているとは思うけれど、もう半分、日本は最初から不利だったということが抜け落ちていると思う。
ところで、コメントで教えてもらったが、ひろゆき@オープンSNS:日本のIT会社の海外進出が失敗する理由。て、どうなんだろう。日本のIT会社が進出を試みたことそもそもあったのかな。
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