CDMは省エネ技術の買い叩きメカニズム

日立製作所、電力損失減らす送配電方法・国連がCDMに承認(日経) 今後中国やインドで進められる送配電網の整備事業に納入する。仮に国内の配電用変圧器をアモルファスに改めると、年間400万トンのCO2を削減できるという。日立産機は今後5年で同変圧器の売り上げを倍増させる計画。CDMは先進国が発展途上国に技術や資金面で協力して温暖化ガスの排出を減らす見返りに、自国で減らした分として算入できる仕組み。
こういうCDM(クリーン開発メカニズム)って結局、省エネ技術を買い叩かれることになりはしないか。
省エネ技術を供与する代わりに自国で温暖化ガスを減らすとという報償があれば、買う側はその技術を買い叩こうとするだろう。下手すれば最先端の省エネ技術を赤字覚悟で供与することにもなりかねない。
そもそも中国やインドにしても削減義務がないから省エネに対する経済的インセンティブがない。ないのなら、省エネであろうがなかろうが安い方を買いたい。当然だろう。ということはこの日立のアモルファス変圧器を使った送配電網は、従来の送電網と同じ値段で提供しないと買ってもらえないことになる。待機電力が従来品の3分の1というのがウリだから、正確に言えば、待機電力を少なくする分の経済的メリット分だけ従来品より高く買えるのだが、日立側にもその分、自国で温暖化ガス削減というメリットがある。どっちのメリットが高いと言えば、経済格差などから見れば、日立の側の方のメリットが高いだろう。とすると、結局、買う側は「そっちの方がメリットがあるから値段は従来品と同じでいいでしょう」あたりが落としどころになるのではないか。
日立は後で排出権を売るというメリットがあるが、そもそも開発費などを考えれば、そのメリットはどの程度のものなのか。日本という国全体で考えれば、苦労した割には排出権という「不平等税」を少し減税してもらう程度だろう。
もし、中国やインドに排出削減義務があれば、日立はこの新変圧器をもっと高い値段で売れるはずだ。
安く提供すれば、地球全体で温暖化ガスを削減できるという向きもあるかもしれないが、「みなし削減」という制度だから、いくら省エネ技術が普及しても、行って来いだ。しかも、送電網のようなインフラ自体は、より排出を促進するインフラでもある。見かけ省エネでも、それでインフラを安く手に入れることで、そのインフラを元にした排出を促進する設備投資や消費が増えてしまうことになる。
結局、省エネ技術だけで排出削減するのは幻想だ。
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