非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎

darger公式サイト。写真を見ると、まるでヴィンセント・ヴァン・ゴッホだ。ゴッホの作品も死んでから有名になった。何かもう元祖ヒキコモリ、元祖大人になりたくない、子供のままでいたい、のような人の生涯を描いたドキュメンタリー。大家だった日系のキヨコ・ラーナー夫妻が死後発見、世に知らしめた。夫妻は映画でも証言している。もし、彼らが価値を見出さなかったら、全て粗大ゴミとして焼却場で燃やされていたろう。
ヘンリー・ダーガーは若くして両親と死別する悲惨な人生を送ったが、学校では飛び級扱いされるくらい成績が良かったという。父親に新聞の読み方を教えられ、学校で習う本では物足りないほどだった。
しかし、幼くして文字に親しむと、自分の世界の方が外の世界より立派で美しくなってしまい、やがてヒキコモリ状態となる。口を聞いた近隣住民もほとんどいなかった。社会的には掃除夫として80年余りの生涯を終える。
一生書き続けた超長編童話のような小説と挿絵は、作品というより、ダーガーの世界そのまんまの記録のようなものだろう。ペニスのついた少女が出てくるのは今でも謎らしい。誰かから手ほどきを受けたのではなく、全て我流で習得した。
題材は新聞というより新聞紙。ネタを手に入れるためにゴミ箱漁りもしていた。新聞記事に載った殺害された少女の顔写真を紛失して絶望するなど彼にとっては自分の世界の大切なものを失ったも同然だ。
アパートの近隣住民によると、部屋の中で何人もの人が会話しているのを聞く。しかし、部屋にいたのはいつもダーガー1人。彼が声色を変え1人で何人もの役を演じていた、というか、彼の世界の何人かが会話していたのだ。部屋の中で1人で癇癪を立ててわめいていることもしばしば。
映画に出てくる近隣住民はかなりダーガーに好意的。変わっていてはいても、最低限の身なりを整え、働いてもいたし、きちんと生活していたので精神的に障害を持っていたわけではないとか、「人は貧乏なら狂人と言うが、金持ちなら変わり者と呼ぶ」とかなり理解をしようと努めていた。「こういう才能はテレビラジオなどがなかった時の方が育つようだ」とか。
ところで、ダーガーが今を生きていたらどんな生活していたのだろうか。パソコンに向かい放し? そうかもしれないが、そうでもないかも。彼は他人をチリのようだと軽蔑していたというか、恐れていたので、少なくとも他人に自分を見せることはしないような。けれど、マイワールドを築くためのネタ探しには大いに利用していたとは思う。
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