公共交通では行きにくい実相寺は神代桜につらい

神代桜JR韮崎駅から日本三大桜とされる神代桜のある実相寺までバスがあると聞いたが、駅前のでっかい観光マップには載っていない。バス停に行っても、どのバスに乗ればよいのか説明さえない。シーズン真っ盛りだというのに。そうだ、ここは韮崎市であって、実相寺のある北杜市ではないのだ。そんなの関係ねえ、なのだ。
駅員に聞いてやっとバス停が分かる。まだ発車時間までしばらくあったが、背の高い男性がやって来て地図を持って尋ねて来る。「ワニヅカ」「はぁ?」と思ったら、英語で喋り出した。なんだ、どのバス乗れば分からないのか。けれど、「ワニヅカ」なんて初耳。しょうがないから駅に戻って聞いてあげると、同じバス停で同じ時刻に出る。じゃあ、一緒に乗って降りるバス停教えてあげればいいや、と思ったら、何か変だ。「ワニヅカ」行きの臨時ダイヤ表は駅構内にでっかく表示されていて、駅員さんも「あのダイヤ表見てください」という。彼を連れて行くと彼はしっかりケータイのカメラに収める。収めただけで分かるのかなあ、と思って出身どこやと聞いたら、「香港」。なるへそ、漢字が読めるからこれでOKなんだ。でも、行き先が私の乗るべきバスと違う。
案の定、同じバス停に一度に二台のバスが停まる。彼に「君はこっち、僕はあっち」ということで別れた。それにしても香港の人が王仁塚桜を知っていて、神代桜を知らん、日本人の私は神代桜を知っていて王仁塚桜を知らんというのはどういう状況なのか。これは恐らく韮崎駅での、同じ桜の名所でも市内の桜の名所は親切に便宜をはかり、市外の名所は勝手に探して行ってよ、という情報開示格差に関係があるに違いない。
牧原のバス停で実相寺に向かう。バス停から徒歩25分くらい、標高差で50メートルくらいの上り。もともと歩くことも目的なのだからいいのだけれど、それにしても不便。バスは実相寺まで行かないが、車は数珠繋ぎ。つまり、バスも出そうと思えば出せるのだ。本当なら20分で行けるのだが、車が上下ふさぐと歩ける余地がなくいったん停止を余儀なくされて結局25分かかった。
着くと寺の周りは駐車場だらけだ。竹内まりやさんが「日本の原風景」と言った場所も、実態はこの有様だ。
さて、その樹齢2000年と言われる神代桜。この有様だ。遠目には気づかないが、つっかえ棒10本以上、コンクリート製枕でようやく立っているという状態。まるで寝たきり桜だ。境内には明治、大正、昭和前期の神代桜の写真があるが、明治期のそれは今の王仁塚桜のように亭々としている。急速に衰えていることが分かる。
重病患者がいるというのに、車はどんどん上って来る。いっそ上高地のようにマイカー乗り入れ禁止、バス、タクシーのみにしてしかるべき状況だ。
さて、帰りは、本来のJR最寄り駅、日野春駅へ向かう。向こう側の山の上にある。5キロ、いったん高度70メートルほど降りて、100メートル余り上る。1時間余り。この日は結構暑く、上りになると汗ばんでくる。
と、向こうの反対側の歩道から見覚えのある人が下ってくる。香港の兄ちゃんだ。韮崎駅ではその後、確か名前に魅かれたのか、桃源郷に行きたそうだったが、きっと、他に神代桜があると聞いて、予定を変更して来たのだろう。いや、ひょっとすると、本人は最初から神代桜行くつもりが、案内の手違いで別の桜の名所紹介されたのかもしれない。
道路は広く(地方の道路は本当に立派だ)、しゃべる余裕もなかったが、「実相寺?」と言ったら「Yeeh」と返って来た。さて、彼はどんな感想を持つのやら。
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