MONGOL モンゴル

mongol2公式サイト。セルゲイ・ボドロフ監督、浅野忠信、クーラン・チュラン。チンギス・ハーンの大叙事詩というよりも、誓い合った少年と少女の涙ぐましくも美しき愛の軌跡=奇跡。妻役のモンゴルの若き女優クーラン・チュランの清楚で野性的な美しさが草原に映える。
テムジン(=チンギス・ハーン浅野忠信)が矢で背中を射られ、馬の背に伏したままの姿を見て、若き妻ボルテ(クーラン・チュラン)は馬の尻に鞭を打ち、母のいるゲルに帰らせ、自らは囚われの身となる。離れたくないはずなのに離れることで夫を生かそうとする愛の鞭。このような、離れて生かすという献身愛がしばしば見られる。
日本なら夫にしがみつき、一緒に死んで天国で逢いましょうでおしまい、なのだろうけれど、女子供には手をかけないという暗黙の掟があるらしく、それを利用した生き延びる知恵。日本的自己犠牲的献身でもなく、離別に動じない耐久レースのようなモンゴル的愛の形というか。考えて見れば、遊牧民というのは、何ヶ月、何年も会えなければ思いも消えるようでは、あの広い草原を移動できないだろう。それにしても、テムジンは運が良すぎるのだが。
mongol1テムジンの少年時代はなにかハナダマサル氏風で、ちょっと頼りなさ気だし、成人後の浅野忠信も、蝶野正洋のようなライバルの男(スン・ホンレイ)に貫禄で負けている。ただ、雷は防ぎようがないから、怖がらないという、普通のモンゴル人とは「俺は違う」という何度も言う台詞通り、差別化戦略を取ることができたので道は開けた。
蒼き狼とか、伝説に媚びている感があるが、まあ、神話のような話だから許せる。主を失った馬が戦場を所在なげにうろついたり、自分で帰るシーンは黒澤明監督の「影武者」からヒントを得たと思わせる。血しぶきのリアル感もこれまで見たことがない。
しかし、何よりも光るのは、クーラン・チュランだろう。そのためならなりふりかまわず待って待って耐えて耐えて、草原の雪を割って咲いたような花。この女性を見出したボドロフ監督の慧眼に拍手。ボドロフ監督はロシアといっても極東シベリア・ハバロフスク出身なのでモンゴロイド的感性を身につけているのだろう。
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