大いなる陰謀(Lions for Lambs)

lions for lambs公式サイト。ロバート・レッドフォード監督・出演、トム・クルーズメリル・ストリープアンドリュー・ガーフィールド。およそこれほど看板に偽りありの邦題の大いなる陰謀はないだろう。それだけならまだ耐えられるが、内容も、3大スター競演なのにぬるさが際立つ。
原題「Lions for Lambs」は直訳すれば、「子羊のためのライオン」、意訳では、「愚かなリーダーによって戦場に送られる勇者」だそうだが、観たら「おバカのための勇気」ぐらいが一番適訳に思える。実際、lambには「だまされやすいお人よし、良い子ちゃん」というニュアンスがあるようだ。lionにしても、「名士」とか「「名物男」とかという意味があり、微妙なタイトルではある。
では、「おバカ」は誰だろう。トム・クルーズに代表される野心ギラギラの若手共和党ホープか。一緒に合成写真を撮らされる羽目になったジョージ・W・ブッシュにも、コンドリーザ・ライスにもこの際、同情したくなる。
他の「おバカ」候補。メリル・ストリープに代表されるジャーナリスト。まあ、そうだとも言える。言っていることが支離滅裂で、どう対処していいか分からない風情。
ロバート・レッドフォードの大学教授。おバカと言うには憚れるが、「子羊」ではある。あの力のない自己弁護がましい饒舌なんとかしてほしい。
頭よさそうだが世の中に萎えてしまった学生(アンドリュー・ガーフィールド)。おバカを拒否するだけおバカ度は低いかも。
しかし、個々の人物を責めても仕方がない気もする。
トム・クルーズが自信満々にメリル・ストリープにリークする間抜けな子供だましのアフガン新展開作戦こそおバカ度ナンバー1だろう。これはひどい度100%。高地を制圧したら難局を打開できて支持率が回復すると本気で思う政治家がいること自体、この映画が表現した大いなる皮肉だと思いたいのだけれど・・・。
おバカなテレビ番組中にさりげなく字幕でその「新展開の成功」が伝えられ、それを退屈そうに見つめる頭よさそうな学生。ここらへんに一番おバカ度が凝縮されている気がする。これ、テレビ局が無関心におバカ番組を流し続けているというより、ニュース自体が客観的にもはやつまらないということだろう。見所はここぐらいか。
では勇者は? 教授の反対にもかかわらず志願兵となり、アフガンに散った前途有為な2人か。そんな気にはなれない。彼らもどう見ても子羊にしか見えない。
結局、冷静に見れば、最大のおバカはこの映画自身だろうか。アメリカでも失望感がうずまいているらしい反戦映画すらアメリカは萎えている、というか、この映画自体がおバカになりきることで現状のアメリカを表現したかった――と思いたい。
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