ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

twbbir2公式サイト。アプトン・シンクレア原作、ポール・トーマス・アンダーソン監督、ダニエル・デイ=ルイス、ディロン・フレイジャーポール・ダノ、ケビン・J・オコナー。石油の一滴は血の一滴に勝る。There Will Be BloodはThere Will Be Oilのもじりだろう。原作小説「Oil!」をベースにして現代アメリカを表現している。
山師から石油王にのし上がった主人公プレインヴューは、その名の通り、世界をあからさまに見る男で、神も血縁関係も信じない。裏切り者も容赦しない。最後は贋物ではあっても神の使者をも殺す。利用できるものは何でも利用する。
相手に気づかれなければなんでもする。ひ弱な息子の健康のためだと言って、原油採掘の意図を隠して土地を安値で買い取ろうとする。まだ他人の土地なのに下に眠る原油は横からストローで吸い取るようにして全部吸い上げてしまう。中国の東シナ海天然ガス田採掘と同じことをしている。
プレインヴューの癖。何か重要な勝負どころでは酔い潰れて寝ている振りをする。相手を油断させるために。そんな場面が2度あった。
ここに描かれているのは世界のあからさまな現実で、第3の啓示という怪しげな宗教は当時からラジオを使って布教し、今現在のテレビで布教するアメリカのキリスト教団体の揶揄だろう。その代表者イーライの貪欲さもプレインヴューと引けをとらない。互いに相手の力を利用しあって大きくなる。
まるで現代のアメリカの生き写しのような感じがする。現ブッシュ政権キリスト教団体の後押しでイラク戦争を始めたのと重なる。ジョージ・W・ブッシュもできの悪い学生から宗教によって改心し、事業家として頭角を現し、大統領に上り詰めたのは有名な話。こちらは親の七光付きだが。
100年前の話なのにやけにリアルに感じられたのは、現代アメリカの原点を濃縮したような作品だからだろう。当時は原油採掘がベンチャービジネスだったが基本は何も変わっていない、ということも。
原油が勢いよく噴出し、燃えて黒々とした煙が大草原の空を覆うシーンは地球温暖化に至るまでの初期の「啓示」的な場面と感じさせる。
主人公に育てられる少年H.W.役を演じたディロン・フレイジャーは、「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」のエドワード・サンダーズとよく似ている。彼が笑ったのは地震で染み出した原油を見つけたときだけで後は無表情。その無表情が、虐待で無表情になったサンダーズとそっくり。実際、フレイジャーも不幸を背負って生きている。
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