気温上昇⇒二酸化炭素濃度上昇のパラドックス

keeling池田信夫blog:地球温暖化バブルで気温の上昇が先か大気中の二酸化炭素濃度上昇が先かで議論が起きた。「『環境問題』を考える」のサイトにアップされた槌田敦氏の英文論文CO2 EMISSIONS BY ECONOMIC ACTIVITIES ARE NOT REALLY RESPONSIBLE FOR THE GLOBAL WARMING:ANOTHER VIEWなどが元ネタだが、その論文に掲載されたキーリングのグラフ(↑)はなぜ“正統派”の「人為温暖化ガス先行説」を裏切るように見えるのか。
上のグラフは、LETTER TO NATURE:Interannual extremes in the rate of rise of atmospheric carbon dioxide since 1980 Keeling, C.D.; Whorf, T.P.; Wahlen, M.; Plicht, J. van der のグラフから気温と化石燃料、セメント製造起源の排出二酸化炭素分を統計処理して差し引いた二酸化炭素の変動と気温の変動(マウナロアと南極点の合成)を重ねたもの。
その謎の素人でも分かり易いヒントになりそうなのは、この二つのイメージ画像だ。
Takahashi et al.sea-suraface warming左は海洋における二酸化炭素吸収域と排出域の分布(1995年、気象庁サイト参照)、右は世界の気温上昇分布(2005年、NASAサイト参照)だ。
一目瞭然なのは、高緯度特に北半球の高緯度では、二酸化炭素吸収域になっているのに対し、気温上昇は高緯度で高く、低緯度で低い。特に北極圏の気温上昇は世界平均の数倍高い。
この両方のイメージ画像で推測できることは、高緯度では、世界全体の平均気温上昇に大きく貢献しているにもかかわらず、依然として二酸化炭素吸収源の役割を果たしていることだ。
仮説として考えられるのは、
1.化石燃料の使用増大で二酸化炭素濃度が上昇
2.その結果、平均気温が上昇
3.しかし、高緯度で特に気温上昇が激しいにもかかわらず、二酸化炭素を吸収し続けたため、平均気温上昇に伴って海洋全体から大気中に排出される二酸化炭素の増加率は相対的に平均気温上昇率よりも低くなる。低緯度では気温上昇率が低く、二酸化炭素の排出上昇率も限定的になる。
4、このため、統計グラフは気温が二酸化炭素に先行して上昇する傾向になる。

問題は、高緯度は依然吸収源となっているとは言っても、以前より吸収率が減っているかどうかだ。
そこで、推測できることとして、北極圏の気温上昇が特に高いと言っても、年間平均気温がそもそもマイナス30℃程度でいくら異常に気温が上昇しても依然年間平均気温は氷点下であることだ。このため、海水温が0℃以上になる海域は夏を除いて少ないと考えられ、平均気温の上昇で吸収率は少なくともこれまでは影響が相対的に小さかったと考えられる。冷温の貯蔵庫、氷山の溶解がショックアブソーバーになっているとも考えられる。
つまり、大雑把に言えば、低緯度では海洋からの二酸化炭素排出はほぼ平均気温上昇とほぼ比例するが、高緯度での吸収率の低下は平均気温の上昇に比例する度合いが低いと考えられる。
結果、Keelingのグラフのように全体的に気温上昇が二酸化炭素濃度上昇に先行するのはきわめて自然になる。
グラフでは分からないが、化石燃料からの二酸化炭素排出は常に上積みされているので、むしろ海洋は気温上昇に抵抗して二酸化炭素の排出を食い止めようとしているとさえ言える。
しかし、最近になって北極海の氷が急減していることから、今後、高緯度での吸収率の低下が起きて、二酸化炭素濃度増大が加速する可能性がある。事実、グラフの右端では二酸化炭素濃度の線が気温上昇の線を抜いて上昇している。
1.の段階では、まず二酸化炭素が先行するはずだが、気象は複雑系の中にあり、統計グラフでは「最初の一歩」は特定不可能だろう。統計グラフだけでは、気温上昇先行を証明できないのだ。
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