アウェイ・フロム・ハー 君を想う

awayfromher公式サイトアリス・マンロー原作、サラ・ポーリー監督、ジュリー・クリスティゴードン・ビンセントオリンピア・デュカキスマイケル・マーフィー。「華氏451」「ドクトル・ジバゴ」のジュリー・クリスティー主演。もう60歳代後半なのに、あのターコワイズブルーの瞳は透き通っていて、いまだその美しさを保っていた。
Fahrenheit45120年前に建てられた家を昨年か一昨年だったか、と夫グラント(ゴードン・ピンセント)に聞くフィオナ(ジュリー・クリスティ)。20年前のことは覚えていても、ついこの前のことは忘れている認知症だが、案外、これがヒントになっている。
なぜ彼女は介護施設に入った途端に夫に復讐するかのような不倫行為を繰り返すのか、夫も薄々感じて演技しているのではないかと訝る。
しかし、夫が現役の教授時代に散々女学生と遊んで傷つけていたのは20年以上前だ。つまりは、一ヶ月間の面会禁止期間中に、フィオナの記憶の中から、結局自分を見捨てなかった夫との20年間の生活がすっぽり抜け落ちたからだろう。フィオナにとって一ヵ月後に現れたグラントは20年前の嫌な夫なのだ。
drzhivago恐らく日本人ならこれにて意気消沈なのかもしれないが、さすがに凄いのは、それでもグラントはめげずにフィオナの新しい恋人の妻とじっ魂になるからさすがというか。それがまた不倫にちっとも見えないところが年の功というもので、老人こそ倫理から自由になった文字通りの自由恋愛できるのかもしれない。大体、グラント自身も相手の名前を何度も間違えていて、脳の「自由度」が増している。腐る寸前の肉が一番番美味しいという諺もある。腐る寸前の脳が一番自由なのかもしれない。
深刻なテーマでありながら、やることはやる、その執念は凄い。老人力とはこのことだろう。
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