告発のとき In The Valley of Elah

itvoee公式サイトポール・ハギス監督、トミー・リー・ジョーンズシャーリーズ・セロンスーザン・サランドン。原題:In The Valley of ElahのThe Valley of Elahというのは、ダビデ古代イスラエルの敵だったペリシテ人の巨人兵士ゴリアテを投石器で倒した場所で、映画でも子供に教える形で紹介されている。
ペリシテはパレスチナの名称の由来であり、古代イスラエルの敵だったから、ゴリアテとは、現代に言い換えれば、イラク戦争開戦の大義名分となった、イラク保有しているとされ、結局持っていなかった大量破壊兵器のメタファーじゃないか、と思えてくる。とすると、原題自体がイラク戦争のメタファーということになる。なのに邦題の訳分からなさは一体何なんだろう。
実は、このダビデの物語を教えられるのは、イラク戦争に派遣され、不審死を遂げた息子の死因を追うハンク(トミー・リー・ジョーンズ)に協力する地元警察の刑事エミリー・サンダース(シャーリーズ・セロン)の息子、デビッドなのだ。つまりダビデの英語名。これをどう解釈していいのやら。デビッドは「ダビデは子供なのになぜ戦わされたの?」と尋ねるが、エミリーは答えられない。
このエピソードからも兵隊に取られるアメリカ人の息子と、その息子たちが軍律で軍用車の停止が許されず、ただ道に立っていただけで軍用車にひき殺されたイラクの子供とが対称的に描かれている。ラストでは「for the child」とイラクでひき殺された子供に捧ぐとなっている。
この道路と軍律はアメリカ国内でも引き摺っており、犯人たちが地元警察管轄の道路脇で殺し、遺体を軍警察管轄地域まで引き摺ったことに被らしているようだ。しかし、状況は真逆でイラクでは道路でひき殺してOK、アメリカ国内では道路で殺すとやばい、ということだろう。
それから、ハンクののセカンドネームが「ディアフィールド(Deerfield )」なのは、ベトナム戦争の過酷な体験で深いトラウマを負った3人の若い帰還兵の物語を扱った映画「ディア・ハンター」を意識したのだろう。
実際、この映画でも、息子を殺したのは3人の同僚イラク帰還兵。「3人」というのは、「ディア・ハンター」も元々は「西部戦線異状なし」で知られる作家レマルク第一次大戦の戦争後遺症を描いた小説「Three Comrades」から触発されものだから踏襲の意味からも重要なのだ。結局、100年近くたっても繰り返し繰り返し戦争後遺症の伝統も続くのだろうか。
ディア・ハンター」もベトコンの残虐さが強調されていると非難されたが、2003年に実際に起きた事件をヒントにしたこの映画も見方によれば、ラストとは裏腹に所詮はアメリカの戦争後遺症という国内問題だという批判は出ないのだろうか。
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