歩いても 歩いても

歩いても 歩いても公式サイト是枝裕和原作、監督。京浜急行三浦海岸駅前の不二家で一息つく横山良多(阿部寛)、妻ゆかり(夏川結衣)、息子あつし(田中祥平)。普通なら一気に実家へのはずだが、心の準備ができず、いつまでもうだうだ状態なのが痛い。
実家の家屋の造りは1970年前後で固まっている感じ。増築も改築もなし。せいぜい足が覚束なくなった父(原田芳雄)のために風呂場に手すりがつけられたくらい。住人もそのまんま時間を止まらせている。
廃業しているのに医務室はそのまんまで別のことをする父。「ブルー・ライト・ヨコハマ」(いしだあゆみ)のレコードを今でも聴いている母(樹木希林)。映画のタイトルもこの歌詞から採られている。母はまた壊れたレコードのように同じ話題を口にする。なぜかと言えば、15年前に父を次いで開業医になるはずだった長男が海岸で人命救助をして逆に自分が死ぬ悲劇があって以来、時間が止まったのだ。
その長男の命日に次男の良多はその固まった時間に戻るのが嫌で嫌でたまらないのだ。しかも長男はあつしの実父という複雑な立場。長男を嘱望していた父は、あつしには愛想がいいが、不安定な仕事している自分は見下されているようで余計にむかつく。
しかし、父に疎まれているように見えて実は受け入れられているのだ。長男に助けられ今は成人になって律儀にお参りに来るメタボ男性もそれなりに愛されているように見える。慎ましい妻やおしゃべりな娘(YOU)夫婦が緩和剤になっていることもあるけれど、みんな「止まった時間」の共演者なのだから、「あの頃」をリバイバルで再演するにはそうするしかないのだ。
京浜急行の車両。冒頭シーンはお馴染みの赤い車両だが、両親の死後のラストでは最近のブルーの車両が背景を走る。細やかな表現だ。
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