90年基準から2050年基準へ〜EUのCO2削減戦略

京都議定書の1990年基準というのがいかに詐欺的なものかは「莫大なCO2を排出していた東欧を統合した欧州は、何もしなくても大幅なCO2削減が可能で、その排出権を売ることもできる」(池田信夫blog:地球温暖化詐欺)を読むまでもなく今はもう常識になりつつあるが、ヨーロッパは更に進んでいて2050年基準へとシフトしているように見える。
そのヒントになるのがWorld populationだ。
World historical and predicted populations (in millions)の表(出典:2004年国連報告)を見ると、2050年予測で世界の人口は1999年比で59億7800万人から89億900万人へと49%も増えるとされている。特に増加率が激しいのはアフリカで133%で倍以上になり、突出している。続いてラテンアメリカ58%、オセアニア53%、アジア45%、北米28%だ。
その中でヨーロッパだけは唯一−14%と人口減が予測されている。世界全体の人口比で見ると、12.2%から7.0%に縮小することになる。ロシアなどは2050年には1億人を割るとも予想されている。
これは温室効果ガス削減目標を立てる場合、巨大なアドバンテージだ。1人当たりの二酸化炭素排出が変わらなくても自動的に14%削減されることになる。これは日本も同じで、2050年には1億人ぎりぎりにまで減り、現在より21%減となる。その点、日本もEUと歩調を合わせ易くなったわけだ。少なくとも1990年のディスアドバンテージを少しは相殺させてくれるだろう。もちろん、90年プラス2050年の二つのアドバンテージを持つヨーロッパが有利なことは紛れもない事実だ。「2050年までに温暖化ガス半減」を最初に提唱したのがEU、日本であることもそれなりに理解できる。
そして、その他の地域を見ると、絶望的なのは明々白々だ。 非難のターゲットになっているアメリカが全世界で削減しなければダメというのは実は最も合理的で良心的でさえある。なぜ全世界ベースで削減しようとしないのかも明白で削減義務を負う国と負わない国との間の差別化こそ投資促進のポテンシャルになるからだ。その装置がクリーン開発メカニズム(CDM)に基づいた排出量取引で、一種のアービトラージ(鞘取り)ゲーム戦略の維持だ。先日NHKに出演していたEUの責任者は「製造セクターの新興国への移動は低賃金が理由で排出量取引ができる前からおきていた」と言っていたが、ごまかし以外の何物でもない。排出量取引で更に移動が加速されることは間違いないのだから。
つまり一番悪質に市場メカニズムを利用して儲けようとしているのはアメリカではなく「環境優等生」のヨーロッパなのだ。その「環境優等生」も1人あたりの排出量は欧州18カ国のうち、10カ国は排出増で、喧伝されている割には増えている。茶番はどこまでも続く。
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