BUG/バグ

bug公式サイトウィリアム・フリードキン監督、アシュレイ・ジャッドマイケル・シャノンリン・コリンズ、ハリー・コニック・Jr。英語のbugにはシラミなどの虫、盗聴器などの意味があるけれど、両方の意味が掛け合わされて出来上がったような映画。ホラーと思いきや、物凄く入り組んだ愛の悲劇のようにも見える。
アグネス(アシュレイ・ジャッド)はコカインの常習者。そこにレズバーで紹介されてアグネスの住むモーテルに来たのが、ピーター(マイケル・シャノン)。彼は湾岸戦争症候群らしい。
ヘリコプターの爆音と天井のファンがシンクロするというのは「地獄の黙示録」以来、お馴染み。冒頭でもヘリコプターがモーテルに接近するようなシーンがあるが、思わず砂漠地帯の軍事施設を攻撃するのかと錯覚しそうな印象だ。
時々ファンの上の天井から下を窺うようなカメラ。それに感づいているようなピーター。何か得体の知れないものから監視され、攻撃を仕掛けられているかのようなモーテル。
ピーターがまず虫音の源と思ったのは天井の煙感知器。「プルトニウムよりも強力な放射性物質アメリシウムが入っている」と感知器を壊して捨ててしまう。実際、一部の感知器にはアメリシウムが使われているので更に妄想に引き摺りこまれそうだ。、
2人とも孤独で妄想に囚われ易い状態。最初、ピーターだけの妄想が徐々にアグネスに感染するようだが、その過程には孤独の癒しが作用しているような。
観ながら変な錯覚感を感じることがあった。元夫のジェリー(ハリー・コニック・Jr)とピーターとは同一人物、あるいは分身なんではないかと。ピーターが朝起きて朝食を買いに行っている間に、なぜか務所帰りのジェリーがバスルームのシャワーを浴びている時点からそうだ。
実は湾岸戦争に従軍していたのはジェリーで、従軍する前の夫はピーターのように優しかったが、従軍後の湾岸戦争症候群に罹ったジェリーは暴力性を持ってしまった。傷ついた彼女はコカインを飲み始め、従軍前のジェリーを妄想しているうちにピーターという別人格の人間を妄想してしまったとか。こうなったのは全部軍のせいだから、その線でどんどん妄想が暴走してしまったとか。アルミホイルを部屋に張りまくるというのは、虫除けよりも電波撹乱のためだろう。何かパナウェーブ状態だ。
最後のモーテル炎上爆破は冒頭のヘリ攻撃妄想と一致していて奇妙に完結しているように見える。エンドロールで倒れているのはアグネス1人。しかも、焼死ではないところが最後まで妄想を逞しくさせる。
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