百万円と苦虫女

hyakumanen公式サイトタナダユキ監督、蒼井優森山未來ピエール瀧、竹財輝之介、齋藤隆成笹野高史嶋田久作モロ師岡石田太郎キムラ緑子矢島健一斎藤歩堀部圭亮江口のりこ。昔の深夜番組11PMのメロディが流れる。シャバダバシャバダバという随分なオヤジギャグなのだけれど、ムカつくルームメートの持ち物捨てたくらいでそんなに拘留されるとは思えないから大袈裟感は否めない。
前科といばれるほどの前科でもないのに、鈴子(蒼井優)はなぜ前科に固執するのか。「前科」は口実に過ぎず、とにかく家を出て行きたかったのだとしか思えない。それをまあ、強引に弟が迷惑するからとか無理なこじつけが多過ぎる。弟は姉が前科者になったからいじめられるようになったという設定のようだが、どう見てもそうは見えない。子供の世界でも姉が前科者となればむしろ距離を置かれ、ある種の恐れさえ抱かれ、敬遠されると思う。弟は生来いじめられっ子なのだろう。その弟が一番の味方になってくれてしかるべきなのに。ここら辺に脚本の脇の甘さを感じてしまう。
人との接し方が苦手という設定だけれど、特段そんな風には見えない。それにしても鈴子のモテ方と言ったら。海辺ではしつこくナンパされるは、高齢者の山の村では、結婚しそびれた農家の後継ぎに入浴中に一度ならず何か物言いたげに話しかけられる。別に入浴中でなくても言える極めて事務的なことなのに、肝心のことは言えないままで終わる。大っぴらであれ、さりげなくであれ、とにかく行く先々で必死のアプローチが試みられる。
実際、蒼井優はそれだけの魅力があり、一人で放浪する女性を男性が放って置くわけないだろう。行く先々で遁走するのは自分の魅力に対する自覚のなさの現われというか、そういうことを含めて遁走したかったのだろうか。100万円というのは、自活するための最低限の預貯金のようだ。ただし非正規社員の場合の。100万円たまるのを阻止するために借金をねだる男もついに射止めることはできない。
なぜか言い寄る、言い寄りたい男性側が頼りなげ。「自分探し」なんて言葉も男性側にあり、鈴子にはそんな甘い言葉は受け付けない。
その点、この映画は女性の強さが際立つ映画でもある。従来、こういう放浪遍歴、股旅物というのは男性が主人公が定番のはずなのに時代はジャンプしたものだ。時代劇の股旅物は浪人武士が常だけれど、非正規社員が大量出現した副産物か、モテ系女の股旅物が出現したということだろうか。そして彼女は非正規社員だからと言って決してめげていないところにさらに強さを感じる。
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