ハプニング〜ホラー版「不都合な真実」

happening公式サイトM・ナイト・シャマラン監督、マーク・ウォールバーグズーイー・デシャネルジョン・レグイザモスペンサー・ブレスリン。予告編のさわりや部分部分だけ取り出すと虚仮脅しのB級ホラーなのだけれど、映画全体で観ると「不都合な真実」の超A級ホラー版のようで、地味にじんわり恐怖がしみてくる。逆の意味で看板に偽りありだ。
一見、この映画の「主役」は植物のように見えるが、イントロとエンドロールは雲、雲、雲。ひたすら雲の動態を捉えている。つまり、最初からこの映画のバックボーンは気候変動ですよ、と伝えるためだろう。なぜ雲なのかと言えば、地球温暖化予測で雲の影響が最も予測困難でIPCCでも予測モデルは中立で計算されているようだ。まさに目の前に誰でも見られる未知の謎を表すためだろう。蜂が消えたことで意見を求めた先生(マーク・ウォールバーグ)に対し、「地球温暖化」と一人の生徒がさりげなく答え、先生が「有り得る」と答えている。
その映画のヒントになった
Albert Einstein. "If the bee disappears from the surface of the earth, man would have no more than four years to live.
アインシュタインの言葉ではないらしく、アインシュタインの死後40年経て養蜂業者のパンフレットに突然出てきたという(参照)。
これは一種の都市伝説らしいが、多分正解なんだろう。花々が受粉できなくなると食物連鎖がずたずたになるだろうから。
となると、連想するのはあまりに日常化している花粉症。言わば突然、致死性花粉症が発生したと考えると、風が吹くと人々がおかしくなって自死するのかが了解できる。蜂がいなくなったのも変異花粉を避けるためだろう。先生は人が大勢集まると植物が反応するからと言っていたが、それならなぜ一人暮らしの老婦人がやられたか説明がつかない。
シャマラン監督は自分でB級映画だと言っているそうだが、本気で言っているわけではもちろんないだろう。この種の有り得なさそうで有り得るホラー、未知の恐怖というのは本当にリアルに表現するとそれこそわけがわからなくなるからB級に表現せざるを得ないということだろう。もっとも、花粉症だって敏感な人だって鈍感な人がいるだろうから、突然狂うのはもう少し何とかならんかという気持ちはあるが。
一日で沈静した後、テレビに出演した博士も「個人的見解」と断ったうえで、これは「予兆に過ぎない」と言って、キャスターが「一度だけでは何とも言えない」と聞き流すシーンがある。何か今流行の地球温暖化懐疑論争を戯画化しているようでもある。
実際、巷で論議されている温暖化リスクというのは海面上昇とか、熱帯性伝染病の北上とか、ホッキョクグマの住処がなくなるとか、熱波で死者が増えるとか大雨、旱魃、暴風とか既知の知識で分かるものばかりだ。しかし、そんなものじゃないだろう、未知の「かもしれない」が一番恐怖なのだ、とシャマラン監督は言っているように思える。実際、地球温暖化は地球史上初めて地下の炭素が大量に排出される現象で、文字通り何が起こるか科学者にもわかっていない。「不都合な真実」は分かりやすい。しかし、こちらの映画の方が実ははるかにリアルに真の恐怖を伝えている。
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