鞭打ち症ジャーナリズム

RealClimate:Journalistic whiplash This leads to wide press interest, but rather shallow coverage, and leaves casual readers with 'whiplash' from the 'yes it is', 'no it isn't' messages every other week.
ジャーナリズムの地球温暖化問題の取り扱い方は読者を「鞭打ち症」状態にさせるというお話。これは日本のみならず世界的傾向のようだ。
この用語の元ネタはMedia Mania for a ‘Front-Page Thought’ on Climate
その元の元のネタは、Prometheus:A Question for the Mediaで、世界的権威のあるネイチャーに掲載された、「地球温暖化がハリケーンに与える影響はごくわずかかもしれない」と示唆したという論文をニュースとして記事にされたのは発表後2日間で3件、これに対し、ほとんど知られていないような雑誌に掲載された「地球温暖化はハリケーンに大きな影響を与える」と示唆したという論文には2日間で79件ニュース記事にされたという。
ところが、気象学者たちは「ハリケーンに関する主要課題は沿岸の脆弱性であって、気候変動ではない」という声明文を出したが、それ自体も「合意」であって「論争」でないがためにほとんど関心が払われなかったという。そしてAndrew C. Revkinは
it ends up providing ammunition to critics charging the media with an alarmist bias. And once the coverage corrects, it results in what I call “whiplash journalism”その結果、センセーショナルに危機を煽るメディアに批判的な評論家に攻撃材料を与え、それが訂正されれば、「鞭打ち症ジャーナリズム」に帰着する。
とどのつまりは、短時間に首が前後に強く振られて鞭打ち症になるように読者は極端から極端に振られてワケが分からなくなるということだ。
また関連記事ニューヨークタイムズ:Climate Experts Tussle Over Details. Public Gets Whiplash.では、IPCCの温暖化予測での“very likely” (greater than 90 percent confidence) のような用語の定義の明確化はYes or Noのような鞭打ち症を避けるための方策だともいう。詳細は、 IPCC terminology about certaintyで、ちなみに最高は
"Virtually certain" means greater than a 99 percent probability of occurrence.
で、100%はない。なぜないかと言えば、科学では100%と0%(Yes or No)は特異点でそもそも予測では有り得ないことが前提なのだ。つまり、科学とwhiplashとは相容れないのだ。
そう考えると、「IPCCは温暖化を断言したのか」(安井至氏)での、「断言とほぼ同義なのではないだろうか」という発言は、間違っていると思う。それじゃ何のための定義付けか分からなくなる。あくまでgreater than a 90 percent probability of occurrence.とし、それ以上でも以下でもないとしなければ、鞭打ち症ジャーナリズムに加担することとほぼ同義なのではないだろうか。
さらに安井氏を批判した池田信夫blog:地球温暖化についての安井至氏の誤解でも、「科学的には決着していない」というのは逆の意味でIPCCの定義付けに反している。100%でないと決着したとは言えないという問題意識自体が100%と0%を否定する科学と無縁の世界だ。ちなみに「あすの朝、太陽が東から昇ることは断言できる」というのも、日常生活レベルでは○だが、科学的には×だ。99.9999∞% likelyと表現するのがIPCCの定義法だろう。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 経済ブログへ