ダークナイト The Dark Knight

Dark Knight公式サイトクリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベイルヒース・レジャーアーロン・エッカートマギー・ギレンホールゲイリー・オールドマンマイケル・ケインモーガン・フリーマン。ばっとまん・シリーズなのにタイトルから「バットマン」が抜けた理由はジョーカー(ヒース・レジャー、今年1月急死)が実質主演で、バットマン(クリスチャン・ベイル)が間抜けに見えるからかもしれない。
ジョーカーは「無敵の人」の一種のようだ。元々の意味は、死刑になってもかまわない、あるいは、死刑が希望のために法による処罰が抑止力として全く働かない犯罪者という意味のようだが、ジョーカーもカネや権力欲が目的でなく、殺人を心理的ゲームとして弄び、人の心理を思い通りに読んで自分が考えた通りに人が動いて術中にはまり、人が苦しみ死んでいくのを快感にしている頭脳派凶悪犯。
もうこういうタイプが出てこないと映画そのものが成り立ちにくくなり、バットマンのようなクラシックな正義派は色褪せざるを得ない状況のようだ。
実際、ジョーカーは奪った札束の山に火をつけて香港の投資家を火炙りの刑にするが、これは投資ファンドを憎んでのことではもちろんなく、彼の生き甲斐、札束で殺してあげようという、ジョーカーにとっての粋な計らいからなのだろう。ところで、この投資家の風貌、今年ニュースをにぎわせたイギリスの投資ファンド、TCI(ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド)のアジア代表、ジョン・ホー氏にそっくりなのは笑えた。
こういう壊れた凶悪犯というのは「ノーカントリー」のシガーを思い出させるけれど、違うのは無口のシガーに対し、ジョーカーは饒舌すぎるほど饒舌なこと。しかも、それが犯罪者にありがちな自己陶酔的な饒舌ではなく、計算ずくの饒舌であること。いっぱい情報撒き散らして相手を翻弄させてしまうことだ。その意味で彼は大変な努力家で勤勉な美学を持った犯罪者だ。ジョーカーが口裂け男なのはそのことの表現だろう。ところで、このキャラ、「口裂け女」のパクリなのかと、ふと思ったりもする。
しかも、ここでも「ノーカントリー」で出て来たコイントスが倫理や計算を超えた選択の方法として出て来る。ただ、コイントスをするのは、ジョーカーではなく、「二面性の顔」を持つ男、検事のデント(アーロン・エッカート)。彼はジョーカーに本当に二面性の顔にされてしまう哀れな役なのだけれど、こういう人がHeads or tailsと言っても、「ノーカントリー」を観た人には「何、これ」って感じだろう。確かに表と裏、二面性の選択なんだろうけれど。ロシアンルーレットコイントスの合わせ技も披露されるが、正直いけてない。ちなみに彼は「光の騎士」と訳されていたが、英語では「White Knight」(白馬の騎士)。これも、あのニッポン放送株をめぐるライブドア・フジテレビの騒動以来お馴染みの言葉になったので敢えて訳を工夫したのだろうか。
バットマンとは言えば、存在を忘れてしまうほど影が薄く、最後の最後まで冴えない。実はこのことがこの映画の最大のテーマであるように思える。
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