シティ・オブ・メン

cityofmen公式サイトパウロ・モレッリ監督、ダグラス・シルヴァ、ダルラン・キュンハ。「暑い」。冒頭のこの台詞がこの映画の全ての原因だ。戦闘体制で銃を持っても昼寝したくなる気だるい暑さが支配する。映像自体が暑さで黒ずんでいる。
18歳で父親となり、2歳の息子を育てるタイガー・ウッズのような顔したアセロラと父親を知らずに育ったニューヨーク・ヤンキースのロビンソン・カノーのような顔したラランジーニャは親友同士。実は暴力の連鎖で結びついているのだが、この暑さは、平和と暴力、友情と敵対、生と死の垣根さえあやふやにしてしまっている。だから危険なのにかなり暢気。それがブラジルのリオデジャネイロの崖に張り付くように広がる貧民窟ファヴェーラの世界だ。
ここは子供のころから足腰を鍛えるには最適の場所。若者のギャング同士の抗争でも、坂を駆け上がって息切れする人間はいない。そのことは意外と重要で、サッカーじゃないけれど、その圧倒的身体能力、スピードが彼らの唯一の表現法だ。抗争は自己表現だ。
彼らはなぜ無意味な抗争を繰り返すのか。それは貧しいからだ。「金持ち喧嘩せず」とよく言うが、ここでは貧乏人同士は喧嘩が最大のレジャー、暇つぶし。「この丘は俺たちのもの」と雄叫びを上げてもそれ以上の意味があるとは思えない。ある一線を越えると、自分の死も、相手の死も、それほど大層なものと思えなくなるんだろう。地獄と天国が同居する世界。その悲しみと喜び、ともに暑くて腐敗しているようでもある。カーニバル(謝肉祭)とカニバル(共食い)って語源的にも近いようだし、彼らの抗争は共食いのようでもある。
暴力の連鎖の因縁から逃れるため、2人はそのひどい世界から逃走する。そう思わせたのは結局、幼い子供だった。
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