落下の王国

The Fall公式サイト英題:The Fall。 ターセム監督、リー・ペイス、カティンカ・ウンタール、ジャスティン・ワデル。冒頭、Once upon a time in Los Angelesと来る。ロスと言えば、ハリウッドで、自己言及型の映画としては「インランド・エンパイア」を髣髴させ、この映画も基本映画の中の映画だ。
一体、この夢は、主人公の映画のスタントマン・ロイ(リー・ペイス)が少女に話した御伽噺なのか、あるいは少女アレクサンドリア(カティンカ・ウンタール)自身の空想なのか実は分からなくなってしまう。シンクロニシティで共通夢なのかもしれないが。
分かることは、この映画が病院内での入院患者の慰安のための映画上映会で始まり、上映した映画が終わるとこの映画も終わること。夢の中の登場人物は入院患者が「演じて」いるということだ。あの世界遺産巡りのような万華鏡のような御伽噺も、入院患者同士のロイとアレクサンドリアのベッドでの会話すら、「夢」の側にあるのかもしれないということ。蝶々が島の形にもなり、恋敵の女性の顔を隠す扇子になり、少女が落とす手紙も蝶々のように見えるということ。特にあの島はアラブ首長国連邦・ドバイ沖のパーム・アイランドとザ・ワールドを思わせる。
御伽噺の中の打倒すべき、悪辣なその名もオーディアス(Odious=憎むべき)総督とは、当然、ロイが失恋した女優の恋敵ということになる。
となると、この御伽噺は失恋で自殺願望を持ったロイの妄想、精神分析的に言えば、代償行為のようにも見える。けれど、ロイは少女に何度もgibber=ワケワカメなこと言うなと言うが、アレクサンドリアも負けずに「これ、あなたが読むべきものじゃないの」と応酬し、どっちがどっちなのか分からない。
タイトルのThe Fallは二人とも、落ちて入院したからというのが基本だけれど、眠りに落ちるのもfall asleep。失恋も落下だし、自殺も落下、何かをつかもうと背伸びする少女も落下の運命にあるということだろう。たとえそれがオレンジであろうと、モルヒネであろうと。オレンジは少女の夢のメタファーだろう。
モルヒネも実はプラシーボ、偽薬というのが徹底している。
いずれにせよ、全て映画館で起きたということ。で、「夢」とは映画の中の映画だということ。
トリビア的には、「夢」の中でチャールズ・ダーウィンが死なんとする猿のウォレスに「進化論は君が考えたんだよ」と謝る事。ウォレスとは、アルフレッド・ラッセル・ウォレスのことだが。
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