アキレスと亀+大久保清

achilles公式サイト北野武監督。ビートたけし樋口可南子、柳憂怜、麻生久美子中尾彬伊武雅刀大杉漣筒井真理子、吉岡澪皇、徳永えり大森南朋。この、車に乗ったベレー帽のビートたけしって、連続殺人犯大久保清そのまんまじゃないか。彼はテレビドラマ「昭和四十六年 大久保清の犯罪」で、大久保清役を名演している。まだ北野武監督デビュー前の作品だ。
実際、この映画の主人公真知寿も少年時代、大久保清と同じ群馬県で育った設定だ。恐らく北野監督の思い入れから、大久保清を下敷きにし、「殺人犯にならず本物の画家だった場合の大久保清」を描きたかったのではないか。
地方の有力者の富豪の家に生まれ、子供時代は絵を描くために列車まで止めても叱られないという甘やかし放題された少年にとって、この世界が自分の思うままの楽園としか見えなくて当然だろう。つまり、世界は自分が描く絵と同様、自由でどうにでもなる世界だということ。あまりに自在過ぎたため今更、不如意な現実で地道に生活するなんてもはや無理だったのだ。
恐らくアキレスとは世界を思うまま闊歩できる自由な世界で、亀とは有り得ないほど不自由な現実。大久保清同様、不自由な現実にぶつかると、真知寿は殺人ではなく、自殺衝動に向かっているように見える。
阿漕に買い叩く画商の言われるままに画風を変えて、どんどん自虐的に狂気化していく様をギャグの連続でゲラゲラ笑わせながら見せるのはさすが。仲間が車でキャンバスにペイントをぶつけて事故死したり、娘が死に、樋口可南子が逃げ、「芸術的自殺」を二度試みるも二度失敗。
取り分け、閃きを求めて自ら溺死寸前まで風呂場で酸欠状態に追い込む“濡れ場”シーンはエロスと死というテーマが巧みに込められていて圧巻。妻役の樋口可南子が体当たり演技というか、お尻突き出しまくり演技というか、樋口可南子の股の下でビートたけしが悶絶するなんて凄過ぎる映像だ。
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