フロンティア FRONTIER(S)

frontiers公式サイト。サヴィエ・ジャン監督、カリーナ・テスタ、サミュエル・ル・ビアン、オルレアン・ウィイク、エステル・ルフェビュール、パトリック・リガルド。これはすごい。このフランス映画を観ると、ハリウッドのホラーが所詮は子供だましに見え、ヨーロッパのホラーは本質的により残虐で徹底しているのが分かる。
タイトルの「フロンティア」とは国境近くの辺境の砦という意味らしい。背景は2007年のフランス大統領選の際の移民たちの暴動。けれども、警察から逃れようとしたはいいが、警察より恐ろしいこの世の地獄に嵌ったというお話。
何が恐ろしいかと言えば、ゾンビなどのようなこしらえ物一切抜きで、現実離れした超人的能力を持った人間が出てくるわけでもなく、現実にある素材だけで作った100%天然ホラーであること。だから観ているうちに観ているのではなく、その現場にいるような切迫感がある。観ているうちに人間と獣の区別がつかなくなってくる。しかも、恐ろしいことに恐怖は間を置かず、最後の最後まで持続してしまう。心臓の弱い人は見ない方が良さそうだ。
けれども、冒頭の子宮の超音波映像が示すように、これは本質的にこれから生まれてくる子供を守るための母性の命がけの戦いだ。相手が狂信集団だから戦うとか観念的な大義とかではなく、彼女らも親ライオンが子ライオンを守るように動物的に戦っている。
男の仲間が皆殺しされても、子供を守るために狂信集団に屈従するわけにはいかないのだ。主人公が罠に嵌る以前から囚われていた女性も、ただただ子供を守るためだけに耐え難きを耐え忍び難きを忍んでじっとチャンスを待っていた。文字通り血みどろにになって耐えに耐えて戦い抜いた母性のレジスタンスの物語だ。そう考えると、恐ろしさを超えて恐ろしいくらいの愛情感動物語に見えてくる。
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