パコと魔法の絵本

pako公式サイト中島哲也監督、役所広司アヤカ・ウィルソン妻夫木聡土屋アンナ阿部サダヲ加瀬亮小池栄子劇団ひとり山内圭哉國村隼上川隆也。「お前に名前覚えられるだけで不愉快だ」という傲岸不遜の偏屈じじい大貫(役所広司)が、決して自分の名前を覚えてくれないパコ(アヤカ・ウィルソン)に惚れてしまうという涙なくして見られない愛情物語。
パコが毎日読む童話と物語がパラレルになっていて、パコはその間の中間子的な役割。アニメ部分はパコの中の世界だろう。
その童話には「毎日読んでね」と記した事故でなくなった母親の走り書きがある。これは多分ウソ。パコが日ごとに記憶喪失することを知った病院の誰かが実は書いて与えたものだ。それは恐らく、大貫が後で記したものだろう。毎日読んでくれれば、毎日パコと一緒に童話を読んで上げられるから。
大貫は裸一貫、他人に認められることを人生の糧にして一代で大会社を築いた人物。世の中で出世するということは自分の名前を覚えてもらうことだ。「お前に名前覚えられるだけで不愉快だ」という口癖はその欲望の裏返しだ。他人に覚えてもらうこととの充足と忘れられてしまうことの寂しさはかつて子役で人気を博し、忘れ去られた室町(妻夫木聡)の悩みでもある。そして、この物語の語り部の。
そんな大貫が自分の名前を絶対に覚えてくれそうにない天使のような人間に出会って、はてどうしたらいいものやら。大貫にとってパコは犯すことのできない、不可能な、絶対的な神のような存在だ。彼女は自分の名前を絶対覚えてくれないのだから。自分と全く正反対の人間にたじろいてしまう。そして、2人とも互いに恐ろしく孤独だということも。
しかし、くじけないところが、大貫の大貫たる所以だろう。ここでも手練手管を使って記憶喪失症の少女になんとか自分を覚えてもらおうとする。ついには、院内劇で彼女の世界の一部になりきってしまう。そして、大貫の名は少女の記憶に永遠に残されることになる。
大貫とは何者か。髪型から見てこの物語を語る掘米(阿部サダヲ)だろう。
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