間違いだらけの朝まで生テレビ「日本株売り」論議

asanama20081024朝まで生テレビ・激論!世界金融危機とニッポン」をビデオ鑑賞。冒頭、田原総一朗さんが、各国の株価の下落率をボード(写真)で示し、なぜ日本株だけがこんなに下落しているのかと尋ねたが、まともに答えたパネリストいなかった。しかもボードは捏造なのかミスなのか間違っていて、日本だけ突出して下落率が高いよう印象操作されている。
荻原博子「日本の場合、特殊事情があって、日本の金利ずーっと、低かったですよね。世界中の金利ずーと高かったですよね。そうすると、円を売って外貨を買って投資しようという動きが強かったんですよね。ところが、ここにきてそれがうまくいかないと。ヘッジファンドなんかに日本が円を供与していたりしてたんですけど・・・・ところが海外が利下げしてきていますよね、そうすると巻き戻しが起きて取りあえず円を買っておこうと」
田原「だから、そこで聞きたい。円が買われるのなら、(日本)株も買われればいいのになんで株は売られちゃうの?」
荻原「円高になると日本の株って魅力的になんるんですよ。日本の株って海外投資家がいっぱい買っているんですよ。その人たちはみんな損しているんですよ。円高になって日本の株がよくなったから、じゃあ日本の株を売って自分たちの損失を穴埋めしようと売っているんです」
田原「外国人投資家が日本を見捨てているんじゃなく、日本で儲るから」
荻原「儲かるというより他よりましだから」
堀紘一「それ、間違ってるな(笑)」
ヤスパー・コール「株価は将来の収益織り込むんですね。日本の国内の場合、ほぼマージンゼロ。日本の上場企業は海外でほぼ儲けているんですけど、円高と世界の景気後退のダブルパンチでトヨタのような優秀な企業でも収益は半減、だから日本の株も半減」
堀「本当のこというと、舌足らずの説明なので、なんで日本株が一番売られているかというと、外国の機関投資家が決算を迎えて解約があるかもしれないから現金を確保しなきゃいかん、そこで相対的に流動性が高くて換金が容易な東京市場でもう損得関係なく雨霰で株を売っているんですよ。為替がどうのこうのの話じゃなく現金化したいんです」

面倒なので一字一句正確じゃないけれど、こんな具合。
ところでたたき台になった実際のボード(日本時間24日23:30時点)に出された前日比の下落率(カッコ内)とは別に金曜日の各国の代表的株価指数の確定下落率を見ると、
日本9.6%(同)
米国3.7%(4.5%)
英国5.0%(5.8%)
フランス3.5%(6.6%)
ドイツ5.0%(6.5%)
中国1.9%(同)
韓国10.6%(0.6%)
インド11.0%(1.0%)
となっている。
インドと韓国は日本以上に下落率高いのに、なぜかボードでは有り得ない低い数値が出ている。ともにアジアなので番組が集計した時点で相場は終了しているのにおかしなことだ。わざと間違えたのか、あるいは「日本売り」の先入見から数字を別のものと間違えたのか不明だが、めでたく「日本株が一番売られている」というお膳立ては整えられた格好だ。なんか油断もすきもない、テレビのやることは。そういえば、だいぶ前にもこういうことがあった。基本的なことを確認できるスタッフっていないんだろうか。
さて、荻原さんは確かに舌足らずの面はあったけれど、堀さんの言うように間違っているわけではないと思う(もっとも荻原さんもアンチョコ見ながら語っておられたので、本人の理解もあやしいことはあやしいが)。外国人投資家は自国通貨ベースで損得を考えるから、円高になれば自国通貨ベースの株価は確かに高くなる。たとえば日本株の下落率9.6%でもドルベースでは前日比1ドル=98円から95円になっているので円は約3%上昇しているから差し引きの下落率は6%ぐらいだ。対ユーロではもっと下落率は低くなる。
gerakurituだから表のようにドル換算では日本株のこの1年間の下落率は実際には今月16日現在で31か国中26位だ。逆から数えれば、世界で6番目にマシなパフォーマンスということになる。言わば円高プレミアムがついて確かに「魅力的」なのだけれど、誤解生むのは必定のような。逆に円換算で外国株見れば、悲惨なことになるのは想像するまでもない。コールさんの言っていることも正しくはあってもかなり限定的だと思える。
堀さんの言う換金しやすいから日本株売られる、為替関係ないってのは根本的におかしい。換金だけなら円を売って自国通貨を買わなければならないからこんなに円高にはならんだろう。ということは日本株を現金の円に変えただけで、実際にファンドの解約が多く出た段階で円を売って自国通貨に変えなければならず、その場合、反動で円安になると思う。そうすると、また株価も反騰し、ということになって複雑な動きになりそうで、これが乱高下の原因だと思う。
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