田母神俊雄航空幕僚長の最後っ屁言論クーデター

日本は侵略国家であったのか」by田母神俊雄を通読すると、物議となった「侵略国家」うんぬんよりも、本旨は憲法改正し、自衛隊を正規の軍として認めてほしいという痛切な思いだと感じざるを得ない。
産経新聞にも要旨がアップされているが、いささか不十分。
田母神氏は確かに文末部分で「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣である」とは書いているが、文全体を読めば、「我が国だけが侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣である」が真意だろう。つまり、他の列強との相対比較で侵略国家度が極めて低い」というのが真意だろう。
確かに筆にブレーキがかからなかったという点において、更迭はやむなし、だろうけれど、これは田母神氏の確信犯的言論クーデターと言えなくもない。
氏は60歳。確か空将は60歳定年だから定年退官間際である。それなら、最後っ屁で積年の不満をかましてやれ、と思っても不思議ではない。
氏の本旨は概要こんなところにあると思われる。

1.日本の軍は強くなると必ず暴走し他国を侵略する、だから自衛隊は出来るだけ動きにくいようにしておこうというものである。
2.自衛隊は領域の警備も出来ない、集団的自衛権も行使出来ない、武器の使用も極めて制約が多い、また攻撃的兵器の保有も禁止されている。諸外国の軍と比べれば自衛隊は雁字搦めで身動きできないようになっている。
3.このマインドコントロールから解放されない限り我が国を自らの力で守る体制がいつになっても完成しない。アメリカに守ってもらうしかない。
4.アメリカに守ってもらえば日本のアメリカ化が加速する。日本の経済も、金融も、商慣行も、雇用も、司法もアメリカのシステムに近づいていく。
5.日本ではいま文化大革命が進行中なのではないか。日本国民は20年前と今とではどちらが心安らかに暮らしているのだろうか。
6.アジア地域の安定のためには良好な日米関係が必須である。但し日米関係は必要なときに助け合う良好な親子関係のようなものであることが望ましい。
全体を読めばまことに真っ当な論考であり、簡潔明瞭に戦後60年を経てもなお中途半端な認知しかされていない現在の自衛隊を憂い、現在もなお「無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国」(果し得ていない約束:三島由紀夫)からの脱却を説いたものだろう。
つまり、田母神氏は導入部分として「侵略国家」か否かを問うたもので、いつまでも「侵略国家」という言霊に支配されてた結果、自衛隊はいまなお「雁字搦めで身動きできない」ので、いざという時に日本人の生命と財産は危ないと警告しているのだ。「侵略国家」だったかどうかという過去の問題よりも現在の日本の問題が本旨なのだ。
田母神氏は学者でもなく文筆が生業ではないので、歴史的な事実関係の詳細や表現に瑕疵もあるだろうが、本旨はこんなところだろう。田母神氏は恐らく1970年前後に入隊されたのだろうが、まさか退官間際の今も入隊当時のまま雁字搦め状態が続くとは思っていなかったろう。されば、せめて退官前に言論クーデターでも起こさないと腹の虫がおさまらないのは、真っ当な自衛官なら誰しもだろう。
栗栖弘臣統合幕僚会議議長の“超法規発言”以来の快挙とあえて言っておこう。
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