ブロークン The Broken

The Broken公式サイト。ショーン・エリス監督、レナ・へディ、リチャード・ジェンキンス、ミシェル・ダンカン、アシエル・ニューマン、メルヴィル・プポー、ダレン・エリオット・ホームズ、ウルリク・トムセン、スタン・エリス。全てはけたたましいガシャーーン!で始まる。この映画の仕掛けを考えてみると、ロンドンで暮らすX線技師のジーナ(レナ・へディ)は事故前に自分の分身を見たと信じ込んでいるようだが、分身が現れるのは事故後だろう。
実際は許婚のステファン(メルヴィル・プポー)とデートするために車を走らせるジーナが交通事故に遭い、瀕死の重傷を負うということだろう。実は車の衝突の時間のガシャーンと父親(リチャード・ジェンキンス)の家での誕生日パーティーで突然大鏡が割れるガシャーンとはシンクロしているようだ。ということは、パーティーは実はなかったのだ。
自宅の浴室の鏡を壊して土足で現れる分身は事故前後の記憶を失ったジーナが脳内で見るジーナということになる。忍び込んだ分身のアパートは実は自分の部屋で、ジーナはそれに気付かない。自分の住所すら記憶から飛んでいる訳で、それを教えるのは弟のダニエル(アシエル・ニューマン)だ。撮った覚えのない父親とのツーショット写真は、実は父親の誕生日パーティーで撮られた筈の物なのだ。
ジーナのみならず、父親、ステファン、ダニエル、ダニエルの恋人ケイト(ミシェル・ダンカン)まで分身が登場するに至っては全てジーナの脳内妄想ということになってしまう。
しかも、父親だけは名前がない。実は父親はもうとっくに死んでいる遠い思い出の人なのだろう。他の分身は一応リアルに描かれているが、父親が父親の分身に襲われる際の分身だけは亡霊のような映像になっている。事故車の中から見つけたツーショット写真も父親の顔は潰れている。
よく見ると、父親がジーナを病院に見舞うシーンも2人きりだった。他の家族、友人とは別々だ。ジーナの死んだ父親への追慕の現われだろう。
映画では1000人に1人という内臓逆位の右胸心臓のX線写真をジーナが見るシーンがある。ジーナは職業柄、いつのまにかシンメトリーな夢を見るようになったのだ。カプグラ症候群という病名が疑われているが、これもジーナの持つ医学的知識が脳内で現れたものと思われる。
ジーナには、むしろ結婚前に陥りやすい心理的不安であるマリッジブルーに近い心理がうかがえる。しかも父親を失っていることからのファザコンの気配も感じられる。
医師たちが心配そうにジーナが帰宅するために車に乗り込むのを見下ろす場面がある。そもそも交通事故なのにいきなり精神分析医が出て来るあたり、この映画の裏面を暗示しているようだ。脳内でジーナがぶつけた車の相手はジーナの分身だ。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログへ