小泉毅容疑者は勘違いしていない

「飼い犬殺した厚生省」実は筋違いだった…小泉容疑者「えっ」(読売) 元厚生次官宅襲撃事件で、銃刀法違反容疑で逮捕された無職小泉毅容疑者(46)が捜査当局の取り調べで、「保健所に殺された犬の仇(あだ)討ちが襲撃の動機だった」とする供述に対し、保健所の所管は厚生労働省ではないと取調官に指摘され、「えっ」と絶句していたことがわかった。(略)出頭翌日の23日に山口県柳井市の実家に届いた手紙の中でも、「1974年4月に保健所にチロが殺された。その敵を討った」などとつづり、犬の処分の日付や曜日も書き込んでいた。(略)ペットの処分を規定する動物愛護法を所管するのは環境省で、保健所を設置しているのは、都道府県や政令市などの地方自治体。厚生労働省(旧厚生省)は狂犬病予防法を所管するだけで、犬や猫の処分は保健所の判断に委ねられている。
こういうリーク記事はどこまで本当か分からないけれど、記事が本当なら勘違いしているのは取調官や読売新聞ということになる。
実際、筋違いと指摘、反応示さず=「高級官僚が悪」持論展開−元次官宅襲撃で小泉容疑者(時事)という記事もあるから少なくとも「えっ」は怪しい。
それはともかく、愛玩動物の殺処分は今でこそ動物愛護法に基づいて環境省が告示した行政指針に従って保健所が殺処分することになっているが、それは平成12年からの話だ。それ以前は総理府が平成7年に出した「動物の殺処分方法に関する指針」に基づいていて、その後、環境省に移管されている。更にそれ以前はと言えば、厚生労働省所管の狂犬病予防法における予防的措置(通常措置)に基づいて保健所が殺処分をしていた。そもそも動物愛護法が成立したのは昭和48年(1973年)なのだ。しかも、現場の保健所が殺処分するのは、今でも犬に関してはどっちの法律に基づくかはケースバイケースで違い、かなりあいまいらしい。
で、小泉毅容疑者の愛犬チロは1974年4月に処分されている。当時、動物愛護法はできたてのほやほやで、まだ「殺処分」に関する行政の告示などなかったし、一般的に考えても「愛護法」がその法律の精神の真逆のように思える殺処分の根拠になるなんて思いも及ばないことだ。また当時の法律から言っても、当然根拠は狂犬病予防法であり、所管は厚生省だったのだから「筋違い」でもなんでもない。小泉容疑者が厚生省を恨むのはそれなりに「筋」は通っている。
だから、小泉容疑者が勘違いしていたわけでもなく、「えっ」と絶句していたとしたら、いつの間にか殺処分の根拠が以前と違っていたことに対する驚きだろう。もし、小泉容疑者が詳細を勉強して現行の殺処分の根拠を探れば、環境省事務次官を狙わなければならないことになり、それこそ「筋違い」だろう。
保健所が各自治体の所管で、それぞれ条例で殺処分を決めていると言っても、その大元になっているのは国の法律だから「筋違い」とは言えない。そもそも、行政が縦割りの割に法律がごちゃごちゃ横断し過ぎていて一般人の常識からかけ離れてもつれているから、仮に勘違いだったとしても「正当な勘違い」とすら言える状況だ。こっちの方が余程問題だろう。
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