デス・レース〜鉄はアメリカなり〜

deathrace1公式サイトポール・W・S・アンダーソン監督、ジェイソン・ステイサム、タイリース・ギブソンイアン・マクシェーンナタリー・マルティネスジョーン・アレン。カーレース会場は海上のターミナルアイランドという監獄なのだけれど、どう見ても広大な製鉄所構内ので鋼鉄を目一杯使った鋼鉄耐久レースにしか見えない。これは、近未来のディストピアに見せかけたアメリカの“鉄の復権”物語――。
設定は2012年だからわずか4年後、アメリカ経済が崩壊して失業者が溢れ、監獄も民営化という前置きがリアル過ぎる。GMまでが金融資産運用破綻で潰れそうな今、軟弱な金融経済から重厚長大な製造業こそ不死身のように蘇れ、と言わんばかりの映像。モチーフは「鉄は国家なり」だろう。そもそもエイムズ(ジェイソン・ステイサム)自身が閉鎖されるまで製鉄所で労働者として働いていたところから始まるのだから。レース場への移動は違和感なし。
deathrace2おまけに次の就職口が造船所というのだからアメリカの重厚長大産業復権を歌い上げた作品であることは明らか。エイムズが引退したレーサーというのも衰退した自動車王国アメリカのメタファーだろう。ジェイソン・ステイサム自身が、シュワちゃんのような見た目優先の筋肉バブルではなく、実戦的な鋼のような肉体の持ち主であることもそれを裏付けている。
「あなたの肉体に惚れたのよ。お金ぐらい何とかなるわよ」と最後の給料の少なさに不平すら言わない堅実で健気で、しかも美人と言えない地味系平均的アメリカ人女性を代表するような妻の言葉はバブリーな金満紳士よりも鋼鉄の肉体と質実剛健復権宣言だ。そんな妻があまりに理不尽に殺されて立ち上がるエイムズは「強いアメリカ」の復権の戦士だ。
それはレーシングカーの超武骨ぶりを見ても分かる。鋼の上に鋼をまとった戦車以上に戦車的な姿。それらがゲームソフトのキャラのような扱いを受けるという屈辱を乗り越え、軽薄な相場操縦も、フランケンシュタインの首の挿げ替え捏造ビジネスモデルも乗り越え、視聴率至上主義、アクセス至上主義も乗り越え、死をも溶鉱炉爆弾も、陰謀も乗り越える。古代ローマから近未来アメリカに蘇ったグラディエーター英雄譚でさえある。エイムズは死なずに残された我が子の子育てにいそしみ未来に希望をつなぐのだけれど。
こういう映画が作られる限りアメリカは終わったなどという言説はウソだろう。
ちなみにパチェンコという妻殺しの真犯人は明らかに日本のパチンコのもじりで、その上腕部にはしっかりオールセブンの「777」というタトゥーが彫られていた。まるでアメリカの製造業を衰退させたのは日本だと言わんばかりだ。もっとも業界的には日本というよりアレなんだが。中国の元MIT秀才14Kも、政治的意味が込められているのだろう。
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